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ジャッカル21

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「つまり、急病だとか出張だとか休暇中だとかで連絡がつかないなどと応じてきたら、ズヴェルコフの言ってきたことの信憑性が、にわかに増すことになるだろうさ」
「その場合、向こうは当然こっちが探りを入れてきたと思うだろうな」
「知らん振りをしてればいい。だが、もうそうなったらぼんやりしてはいられなくなるぞ……」
重光は、そういい終えたときにぞっとした。明石もぞっとしたようだった。つかんでいたコーヒーカップが受け皿にあたってカタカタと音を立てたのでそれが分かった。ほとんど同時に二人はつぶやいた、「もうそうなってるかもな……」
明石はあわてて携帯を取り出すと大声でしゃべり始めた。重光は、二つの空のカップを持って給湯室に入った。重光は、カップをシンクに置くと、両手をシンクの縁において頭を垂れた。ズヴェルコフを引き入れたのは重光だった。話を切り出したときの、救済感と転落感が入り混じった、彼の当惑振りを忘れることはできない。あんないい男をもしかして自分は……。重光は雷に打たれたように突然跳ね上がった。自分は、最も急を要することに気づかなかった、なんという人非人だろう、彼の安否をまず心配すべきだった。
給湯室から走り出た重光に、明石が問いかけた。
「札幌医科大への送金って変じゃないか。それにズヴェルコフの母親をどうする?」
「ズヴェルコフ自身のことが分かってから考える。彼がどうなったか俺は今から探ってみる。ちょっと黙っててくれ」
重光は携帯を取り出して警視庁の総監室に直接電話をかけた。普段はあまりするべきことではなかった。手順を無視していた。コード番号を打ち込んだ。転送された。コード番号。さらに転送された。やっと出た。
「はい、総監秘書室」
「もしもし、こんな時間に申し訳ありません。お久しぶりです。筆頭秘書の郡司さんですね? 私、外務省の重光です」
「えーっと、ああ、情報官室の重光様ですか、オウム真理教事件のときに御協力いただいた?」
「はい、お久しぶりです。実はまことに異様な、しかし信憑性の高そうな情報が入りましてね。内容はこの電話を切り次第、秘書室宛にメールでお送りします。用件もそれに添付して送ります。総監になるべく早くお見せください。いやいや、総監の自宅に転送して指示を仰いでください」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦