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ジャッカル21

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「俺がかわいこちゃんと戯れてる夢からたたき起こされてから今まで、ぼんやり夢の続きを想像していたとでも思うかい?」
「さすが、重光! で、どうだったんだ?」
「あわてるなよ。たった三十分で何ができると思ってんだ。警察庁の国際捜査管理官やらなんやらに電話しただけだ」
「組織犯罪対策部の?」
「そうだ。テロリストが入国するという垂れ込みがあったから国際空港では厳重注意しろ、と言っておいた。怪しい男の見かけは通信文そのままを電話口で読み上げた。あと、国家公安委員会の委員してるやつで、井出というのがいたろ? 辞令が下りた時は過去最年少の委員だと評判だったが、当人は暇でしょうがないとぶつくさ言ってるやつ。俺たちの一年後輩だ。やつをたたき起こして同じことを言っといた。長官に朝一番で連絡しろ、何なら今すぐにでもいいぞ、暇つぶしができるぞ、とも言った。部屋についてすぐ例の通信文全文を二人に送っておいた」
「上出来だな。ただし、厳重注意は国際空港だけでいいんかな。密入国という手もあるぞ」
「どうやって?」
「うーん、たとえば、北海道あたりに、パラシュートで飛び降りるとか、海岸線近くまで潜水艦で来て後は泳ぐとか」
「ははっ、まるでマンガだ。しかし、船はありうるな。ロシアとの定期航路がある港を調べさせてチェックを厳しくさせよう。後は貨物船だな」
明石は、だんだんと好奇心が高まってきたようだった。重光のほうに体を向け、大きな目玉を見開いて、顔を近づけてきた。重光は、こいつもふけたな、とふと思った、相手のほうこそ重光を見てとっくにそう感じていたかもしれなかったが。
「ラタジェーエフ外務省次官は覚えてるよな。ボクロフスキー外務省次官補もな」と重光。
「ああ、二人とも会ったことがある。ボクロフスキーの女房は知らん」
「この二人がどうなったかを調べたいね。ズヴェルコフもそれを望んでいる。通信内容が事実だとすると、まさかFSBには訊けない」
「俺たちはさ、曲がりなりにもやつらの知り合いなんだから、なんか用事を作って連絡しようか?」
「それはできそうだな」
重光は、ロシア課の明石のほうが、探りを入れられる可能性は少ないと思った。
「お前がやればいい。議員団が訪露の予定だとか何とか。頼むぜ。すんなり当人たちが出ればいい。もしそうでなかったら……」
「もしそうでなかったら?」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦