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ジャッカル21

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重光は、長柄と古賀が、顔を見合わせて笑っている様子を苦々しく見ていた。ふざけたやつらだ。彼は、この二人が降りるのが最初から分かっていた。組織犯罪室が個別の事由に対応することを期待するのはむずかしかったからだ。二人が、通信文の翻訳を促し、会議を早々に開いたのは、彼らの危機意識からではなく、こんなくだらないものはさっさと片付けてしまおうという魂胆からだったのがよく分かった。
彼らに確認しておくことがひとつだけあった。重光は二人を等分に見ながら物柔らかに話しかけた。
「いや、お忙しいのに、トンチンカンなところにお呼びだてしてしまって、すいませんでした。この通信者はお宅らの部署の職務内容もよく調べずに初めて連絡してきたようですな。当人の大慌て振りが分かります。迷惑なことでしたでしょう。迷惑ついでに、この場を借りてちょいとお伺いしますがね。ここからは万一の場合の話、いや、架空の話とおとりになって結構です。もし、ジャッカルなんぞという不逞のやからが入国して、ロシアの掩護のもとに何らかの罪を犯した場合は、国家間問題になり、種々の国際条約に違反することになりますよね。司法裁判所に提訴も可能ですよね」
長柄がめんどうくさそうに答えた。
「当然です。万一そうなりゃあ、われわれの出番です。原理的にはね。しかしその個人が罪を犯したことを立証できても、その個人を国家が掩護したことを証拠立てることは不可能です。過激派ゲリラが自分から鼻高々に犯行声明するのとはわけが違いますからね。アルカイダじゃないんだ。近代国家である以上、敵は認めるはずがない。せいぜいが、今私らが言った個人的な精神異常、あとは出国管理の事務的な不手際、ぐらいしか認めないでしょうな。キチガイが勝手に出向いて犯罪を犯したんだ、そいつを死刑にすれば終わりだ、ぐらいしか言ってこないでしょうよ。北朝鮮だって、部下が勝手にやったことだ、と金正日が宣言して、拉致問題は解決したことにしてしまった」
「国が掩護したことを、関係者から聞き出そうとした場合、そちらはどんな働きかけをしていただけますか?」
「だからーっ。今言ったばかりでしょ。口を割るはずがないんですよ。初めから不可能とわかっていることをするバカはいないでしょう」
長柄はいかにも重光をバカにしたような口調で言った。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦