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ジャッカル21

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「運転手さん、じゃないや、操縦士さん。なんか拭くものないか!」
「これでよかったらどうぞ。実はこれしかないんですよ」
操縦士は袋田に向かって、しわくちゃで、ガソリンまみれのタオルをほおってよこした。袋田はそれを丸めると、シートベルトをはずし、つい江刺の尻を拭いてしまった。はっと気がついたときは遅く、江刺はぎゃっと声を上げて跳びあがり、天井に頭をぶつけた。
「なにすんのよぉ!」
「手がすべっただけだ。はやくパンツをはけ!」
洗面器にはいっぱいに便が溢れ、周囲の床にもこぼれている。
「こいつを捨てよう。運、じゃねえや、操縦士さん、今、下は海かい?」
「はい、ちょうど相模湾に入ったところです。できるだけ早くお願いします。私、我慢の限界にあります」
袋田は、後部右側のドアを開けた。どっと風が吹き込んできた。下手をすると、外に向かって投げても戻ってくるかも知れなかった。スカートを引っ張り上げている江刺の背後にかがみこむと、便でいっぱいの洗面器を両手で持ち上げた。3キロほどもある。それをドアの外に放り投げた。手を見ると便がこびりついて、粘土細工の最中みたいだった。さっきのボロでよくふく。なぜ自分がこんなことをしているのか。江刺のことをなんと思ってこんなことをしているのだろうか、と一瞬自問した。
袋田は、下を確かめなかったのに気がついて、ぞっとした。もし真下に両陛下の乗っていらっしゃる釣り船があったらどうしよう……

ジャッカルは釣り船から100メートルのところまで迫った。方向を、釣り船の行き先にそろえた。斜め後ろから接近して、斜め前に抜けていく。
釣り船の乗員たちは、体を低くしてうずくまった形をとっていた。船頭だけが、必死で櫓をこいでいた。こぎ手が交代した。今までこいでいた男は、崩れ落ちるように床に倒れた。SPが左手で、向こうへ行けと合図している。ジャッカルは、釣り船より100メートルほど先行すると、ほぼ直角に向きを変えて、釣り船の進行方向を横切る。
上空にヘリコプターが現れた。なにやら洗面器かバケツのようなものを投下した。ヘリコプターは、ジャッカルのモーターボートを追跡してきた。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦