ジャッカル21
「はい、聞きました。自分は横浜の港北区で、第三京浜の検問の指揮をとっております。ただいまの不審車は、そうですね、第三京浜の入り口からここまで十数キロですからあと十分ぐらいすれば現れると思います。拘束は容易です。なにせ、パトカーを上下線ともに三台ならべ、装甲車一台をその後ろに置いてあります。下り車線の場合は、パトカーの鼻を東京側に向けております。Uターンして逃亡する車を、すぐに追えるようにであります。検問は、接近する車にこれらの布陣を迂回させ、道路わきのテント前でおこなっております」
「おい、パトカーや装甲車に、人は乗ってるのか?」
「当然であります。万一車が逃亡するような場合は、すぐに発進して追跡できますから」
「はやく降ろせ! 全員今すぐ降ろせ! Uターンなどしない!」
「なぜですか?」
「警電を聞いてないのか! どれほどの運動エネルギーになるのかわからないのか!」
「あれ? サイレンの音が聞こえてきました。神奈川県警が気を利かせて救急車をよこしたんですかね。なんでサイレンを鳴らしてるんでしょうか」
「違う、違うんだ。運転席から警官を降ろせ! 死ぬぞ!」
「ああっ? あれはなんですか? ものすごいスピードで近づいてきます。新幹線よりもずっと速い。急降下爆撃機が迫ってくるみたいです。いや、爆弾そのものだ。鉄の塊です。うおっ、でっかい。ライトニングジープだ。サイレンを三重に鳴らしっぱなしです。金切り声みたいな音、聞こえますでしょ。ブレーキをかけません。これは、これは、これは大変だ!」
電話口で、大音響が響き渡った。相手は泣き始めた。
「あっ、あっ、なんということでしょうか! パトカーが三台とも宙に舞いました。一台は完全に裏返りました。鼻をかすった装甲車が、今くるくる道路の上を回っています」
その後は、泣きじゃくりが続き、言葉は聞き取れなかった……
袋田が警電でヘリポートに手配を頼み終えると同時に、タクシーは警視庁玄関前についた。階段の途中に、ピンクのタイトスカートをはいた江刺が立っていた。黒のショルダーバッグと赤いゴルフバッグを肩に担いで笑っていた。
「いやに早かったな」
「実は、秋葉原でぶらぶらしてたんだっ」
「急げ。会議などやっておれん」



