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ジャッカル21

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列席者は多士済々だった。正面向かって左側の端には総理大臣佐藤栄作、右側の端には駐日アメリカ大使エドウィン・ライシャワーが坐っていた。大臣、各国大使、政党党首以外にも、巨人軍の王、長島両選手や、東京オリンピックのメダリストたち、たとえば、大松監督と東洋の魔女たちの姿も見えた。東宮家のご意見番小泉信三はわざと末席に居座り、その鬼面にふさわしく、あたりを睥睨していた。部屋の対角線上の隅に、三島由紀夫が坐っていた。小泉を、親の敵のように、ギョロ眼で睨みつけていた。
祝辞は一分以内に、と言い渡されていた。次から次へと挨拶が続いた。殿下は、にこやかにうなずきながらお聞きになる。最後に、首相が進み出て祝辞を述べた。そして列席者に起立を促した。皇族方もお立ちになった。首相は、大音声で両手を挙げて、皇太子殿下、万歳! と三唱した。日本人の男性のほとんどが唱和した。女性と外国人たちは拍手した。
全員が着席した後は、おしゃべりが増え、会場はリラックスした雰囲気になってきた。帝国ホテルのシェフが出張して指揮を取った絶品料理が運び込まれ、あちこちでシャンペンを抜く音がした。その時、照明が落ちてあたりが薄暗くなった。人々はなにごとかと思ってざわめいた。ステージもどきの空間に、スポットライトが当たった。東側のドアが開いて、髪を金髪に染め、銀ラメのドレスを翻しながら、宝塚雪組のスター、葉月ありさが入ってきた。彼女はライトの輪の真ん中に立つと、送れて申し訳ございません、新幹線は速いって聞いていたけれど、思っていたほどではありませんでしたわ、私の、はやる気持ちのほうがずっと速うございました、と言って、殿下に頭を下げた。
会場は水を打ったように静まった。
彼女は、ゆっくりと、妖艶なハスキーヴォイスで、歌い始めた。
「ハッピバースデイ、トゥーユー
ハッピバースデイ、トゥーユー
ハッピバースデイ、ディア、マイ、プリンス
ハッピバースデイ、トゥーユー」
歌い終わった葉月ありさは、上体を突き出すようにして、殿下に向かって投げキスをした。殿下は、苦笑しながらお立ちになった。
「こんなに美しい方の、こんなに美しい歌を聞けて、皇太子をやってきてよかったと思います」
会場は笑いの渦に包まれた。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦