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ジャッカル21

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駆けつけるかのように寄って来たフルシチョフは、妃殿下の顔を仰ぐと、右手をとってその甲に接吻した。妃殿下はにこやかに笑って、すこしかがむと、フルシチョフの右のこめかみに接吻をお返しになった。フルシチョフは、ゆでだこのように真っ赤になった。彼はうれしそうに妃殿下を玉座へと誘った。妃殿下は、左右の人々に向かって、緩やかに8の字を顎で描くように会釈なさいながら、やや内股で、しずやかに優雅になよやかに歩を進めて、玉座に向かわれた。左右からは、そのお姿の美しさを愛でる賛嘆のため息が、次々に発せられた。
日出ずる国が世界に誇る月光妃。愛称オツキサマ。ハリウッド女優達も恐れ入ったオリエンタルビューティ。連日のプラウダ紙の見出しそのままの妃殿下は、拍手の嵐の中で、ピョートル大帝の椅子に腰を下ろした。会衆からは一斉にため息が上がった。
ミハイルは失神しそうだった。
妃殿下は、昨日のあの女に、実に実に実によく似ていらっしゃった。

同年同日、午前十一時四十分

侍従の松村浩一郎は、ほっとしていた。三週間にわたる長旅がもうすぐ終わろうとしていたからだ。心配の種は、次々に現れ、体重が五キロも減った。特に昨日は、自室でずっとご休息中と思っていた妃殿下が、女官たちとこっそりオペラ見物にいらっしゃっていたらしい。今朝聞いた時には、胃がきりきり痛んだ。だが、もう大丈夫だ。あと少しでシベリア鉄道の乗客となれる。うちに帰ったら、まずあつ―い風呂に首まで浸かって、剣菱を冷やでグイとやって、浴衣は片肌脱いで、王、長島をテレビ観戦、オリンピックの聖火リレーも見て…… 松村の顔には、いつの間にやら笑みさえ浮かんできた……
送別会はつつがなく進行していった。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦