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ジャッカル21

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重光は、はっ、と思って室内を見回した。シンと静まりかえって、キーボードの音どころかページをめくる音も聞こえない。課員三十二名は、虫の音に聴き入るように耳を澄ましていた。ドアの擦りガラスに、廊下で立ち聞きしている数人分の影が写っていた。重光は立ち上がると大きな声で課員に向かって「諸君、失礼する」と言った。

第一会議室に入った重光と明石は、テーブルの上のモニターに田岡信二を呼び出した。こちら二人は、相手のモニターに映っている。重光は、モニターに映っている田岡の、無精ひげが耳まで延びた寝不足の顔に向かって語りかけた。マイクは、モニターの屋根に乗っている。
「私がさっき流したジャッカルの正体についてのメールはご覧になったよね」
「見たもみないも、部屋中のやつらが大騒ぎしてますよ。細工のできるやつがメールを課員全員に流しやがった。見つけ出して百たたきしてやるつもりです」
重光は苦笑した。ジャッカルについては何度も緘口令が出ていたが、今や霞ヶ関界隈で知らぬ者はいない。
「用件はそれについてじゃない。明石氏の情報はそちらのコンピューターに入ってきていると思う。すでに君が把握していることかもしれない。私はその一部を明石氏からいま直接口頭で聞いた。残りの情報を明石氏にこれから伝えてもらうから、それを聞いたあと、三人で対策を考えたい」
「了承しました」
明石は咳払いして話し始めた。
「ウクライナのイヤルートナ郡に毎年訪れるひとりの日本人観光客について報告する。私的な訪問は1965年に始まる。当人と、女性一名とその他一名という記録がある」
「その他とはなんだ? おかしな記述じゃないか?」
「それはわからん。要するに名前が記述しにくかったということだ」
「明石よぉ、そこがおまえのダメなところじゃないか? あいまいでいい加減だ」
「いろいろな可能性はある。エスペラント語で書かれた名前だったかもしれないし、コンゴの地方語で書かれた名前だったかもしれないし、大いにありうることは、漢字で書かれていたかも知れんのさ。もっとありうることはなぁ」
「ふざけないで答えろよ? ありうることは?」
「名前がまだなかったりして」
「ああっ、そうか、その一緒に行った女の子供ということか? 事情は計り知れんけど。その女はどうなってるんだ?」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦