ジャッカル21
次に、日本人のイヤルートナ郡への訪歴を問題にしよう。ウクライナの片田舎にしては日本人の訪問者がいやに多いと思うね。2005年の6月からさかのぼって1995年の7月までのあいだに、ウクライナを訪れた日本人は、述べ15万2724人。そのうちイヤルートナ郡を訪れたものは、4726人。ツアー代理店の扱った日本人客とホテル宿泊客をクロスチェックした結果だ。代理店を通さない個人旅行者の行動は、宿泊歴以外、把握する手段はない。イヤルートナ郡訪問者の分類を言うと、観光客が3112人、マスコミ関係者が782人、政府、地方公共団体の視察団員が410人、民間の農業工業関係の業者が406人、撮影者が12人だ」
「おいおい、その撮影者ってなんだい? マスコミに入んないのか?」と重光は素っ頓狂な声をあげた。ひっかかるものを感じた。
「確かに変なカテゴリーだがね。アマチュアのカメラマンなんだ。だから観光客のカテゴリーに入れるのがふさわしいんだがね」
「なぜそうしないんだよ?」
「彼らは、ただ写真を撮るためだけにこの郡にくるんだ。渡航目的欄にそう書いてあるんだ。観光と申告していて、専ら撮影していた者もたくさんいただろうね」
「何を撮るんだ?」
「ひまわりだよ」「ひまわりなんか、日本にいくらでもあるじゃないか。なんでわざわざ、ウクライナくんだりまで写真を撮りに行くんだい?」
「そこが、世界で一番広いひまわり畑だからさ。えんえんと遥かに延びて天までとどくひまわり畑が、周囲360度に広がってるそうだ」
「ほーぅ、それはそれは。行ってみたいもんだね」
「さて今度はリピーターを見てみると、10年間で2回訪れたものが28人、3回が3人、4回が1人、後はずっとゼロで、10回、つまり毎年通ってくる者が5人だ。」
「その5人の内訳は?」
「ははあ、やっぱり君もそこに目をつけるのか。4人が民間の農業関連業者、残りのひとりは観光客だ」
「その観光客の、1994年以前の分も含めた旧ソ連国内での行動履歴を教えてくれ」
「そう来ると思ってたよ」
そう言うと、明石は右手を伸ばして重光の机の上のキーボードをたたいた。
『みんなが聞き耳を立てているぜ』とモニターに出た。



