ジャッカル21
はっきりとした権威と権力の分担は白人連合にとって、まことに能率がよかった。ただ日本の象徴天皇制がこの構図を乱す。日本が、恐慌の影響から脱しきれず、憲法改正を繰り返して右傾化し、軍国主義化すれば、天皇制は近代前期の日本で果たした役割を繰り返しかねない。タイは王家の血統全体が引退するだろうが、日本は憲法で血統全体を国民が権威として受け入れた形になっている。びくともしない。困ったものだ。世界大戦が起こらない保障はない。そうしたら今世紀半ばを待たずに、またヤルタ会談を開かざるをえなくなる。
白人王朝以外の、制度化した王朝をなくして、その国を共和国化し、大統領制を採らせ、西側の子分にすること。これは、三者の共通の希望だった。王朝をなくすことは難しい。王朝を倒すとなると、戦争かテロによるしかない。王朝が信仰の対象になっている場合さえあるから、それを倒すと、国民がニヒリズムに陥ることもあるし、場合によると民族運動が起こりかねない。アメリカは9・11以降、イギリスは地下鉄爆破事件以降、反テロリズムの旗色を鮮明にしていた。
ブッシュとブレアのBBブラザーズは口をそろえて言い張った。
「我々はテロに訴えることはできない。してはならない。あくまで民主的で平等な外交交渉と他国民の主権を尊重する。この姿勢を貫いた果てにのみ、我々の希望が実現することを望んでいる」
しかし、二人は、言葉とは裏腹に、期待にあふれた眼で、プーチンをやさしげに見続けるのだった。いかにも、俺達には手が出せないんだ、と訴えているようだった。
プーチンは憤慨した。白人王朝主義を現実化するのはロシアの役目だということなのか、執事であるロシアは、ダーティーワークも引き受けなくてはならないということか、冗談ではない、二重人格者どもめ、からかうのもいいかげんにしろよ。
話がこんなところに落ち着くとはプーチンは予想もしていなかった。ドイツ降伏以後の算段をしたかつてのヤルタ会談のように、北朝鮮が崩壊した後、統一朝鮮の操り方に関して、実質的な段取りの手はずを出して、話し合いを終えようとしていたのに。しかし、米英の首領の熱っぽい目つきから、二人がまんざらふざけているだけでもないと察せられた。執事としては、ここでいいところをみせつけてやらねばならないのかもしれない……



