恋の結末
この世の不条理について考えながら教室に入ると伊吹が一人教室にいた。
普段一緒にいる小鳩さんは居なく何だか寂しそうに腰掛けていた。もしかすると伊吹が女子生徒の中で浮いているのは本当なのでは?
となると、声をかけるべきか……。
しかし、昨日の事もあるしなあ……。
僕は様子を探ることにした。
「おーい。伊吹」
「何よ、変態」
取り付く島も無かった。
これでは購買に誘うどころではないので伊吹に昨日の出来事を説明した。
説明と言ってもあれが全てなんだがな……。
僕自身でも意味の分からない説明を延々と行なったがさほどの効果は得られなかった様だった。
しかし、僕は昨日のどの部分が伊吹の機嫌を損ねたのかよくわからなかった。
もちろん嘘だけど。
「ふんっ」
誘う場所が購買ぐらいしかない自分が恨ましい。
「伊吹、購買いかないか?」
「購買? 別に行きたくない」
伊吹は半額弁当を共に争う戦友になる気はないらしい。残念。と、そこで後ろから救世主が現れた。
「いいですわね〜。私、お昼のお菓子を持ってくるの忘れてしまいましたし」
「じゃあ私く、お弁当あるけどクラブの前に何か食べたい」
そう言って伊吹はこっちを見ると、
「変態は関係ない。小鳩が行くって言うから行くくだけ」
少しこちらを睨むようなそぶりを見せると伊吹は席から立ち上がった。
相変わらずよくわからん。
「じゃあ3人でいこうか」
「変態が誘ったんだから、おごりだから」
その理不尽な一言で僕の財布は限りなく軽くなってしまった。
しかし、特に自分は買う物もないので購買の外で二人を待っていた。
「う〜ん菓子パンがあればいいんだけどなぁ」
「もう……部活の時にそんなのたべちゃだめですよ」
「そっか〜。ざんねんだなあ」
葵とおそらく葵の友人であろう女の子の二人組は僕に気づくと、
「わあ、拓也さんじゃないか〜」
葵の友人であろう女の子が僕に話しかけてきた。
「えーと、葵たちも購買に来たの?」
「ええ。そうですよ」
「もう……たっくん。私を無視しないでよ」
「ああごめんごめん。葵はなにを買いにきたんだ?」
「うーん、私はねえ飲み物を買いに来たの。家に忘れて来ちゃって」
照れたように笑う葵の横では「ふーん」とか「なるほどー」とか言いながらこっちを見ている。
そうしてひとしきり眺め回すと、友人は「まあ、悪くないじゃん。頑張りなよお」と葵に言うと、こっちを振り返り、
「それじゃあねー」
と手を振って教室の方に向かっていった。
「えとー、彼女は何か買いに来たんじゃないのかなあ」
「さ、さあ。どうしたんだろうね」
葵も少々困惑気味だ。
「今戻った。待たせたか?」
「私にまで買って下さってよろしかったのですか〜」
それぞれ思い思いの食べ物や飲み物を持って二人が購買から出てきた。
「はい、お釣り」
伊吹がお釣りを手渡してくる。
「これで変態と呼ぶのを止めてやる」
「えっ、あ、うん」
「これからは変人と呼ぶ」
「ちょっと待ってそれは変わったの?」
「たっくん。変態ってどういう事? 何かしたの?」
葵が食らいついてくる。
「裸を見られた。その上押し倒された」
「ええっ!?」
「おい、二つ目はおかしいだろ!」
「ふふふ、仲のよろしいことですわ」
葵の誤解を解いて教室に戻ると授業が始まる直前になっていた。
教室には行る前に、
「誰かと購買に行ったのは初めて。楽しかった」
伊吹が笑った……様に見えた。