恋の結末
僕と葵は並んで閑静な住宅街を歩いていた。
この住宅街を抜けた先に恐ろしい坂道が待っているわけだが、今は考えないでおこう。
「たっくん。あれみて〜」
そういって嬉しそうに指差す先に猫がいた。
コンクリートブロックの塀の上をてくてくとこっちに向かって歩いてくる。
にゃー
「わー、たっくんにゃーって言ったよ」
「猫か……。結婚でもしたらペットの一匹でも買ってみたいものだな」
「け、結婚なんて……。まだ早すぎるよ……」
急にオドオドしだした葵は何だかよく分からない事を言い出した。
「ところで、部活の時間は大丈夫か?」
「大変、早く部活行かなくちゃ」
「おう、行ってらっしゃい」
「たっくんまた明日ね。あっ、明日と明後日は用があって行けないけど、ちゃんと朝起きるんだよ」
そう言って葵は一足先に学校に向かって行った。
家の角を曲がり葵は見えなくなった。
「おっはー」
古っるーいネタが後ろから聞こえてきた。
由良の奴め……。またしょうもない事を言いやがって。
呆れつつ僕は二人を振り返り見た。
……二人?
由良と見覚えのある女の人が立っている。見覚えのある人は少し頭を下げると言った。
「ごきげんよう。磐手さん。お話はかねがね由良さんから聞いております」
流れるような紫のロングヘアー。
透き通るような透明な肌。
端正に整った顔。
しかし、そこには淡い笑みを浮かべていた。
彼女はこの世のものとは違ったミステリアスさをたたえていた……。
あれ。この人……。
「ガッハッハ。とうとう僕にも春がやってきたのだー」
むさ苦しい叫びを上げる由良の横で相変わらず謎の女性は微笑んでいた。
「おいっ。これはどういうことなんだ、説明しろ」
その一言で我に返った由良はぽつぽつと勿体ぶった様に話し始めた。
「だから〜、あの時のハンカチの持ち主なの」
「で、彼女の名前は?」
「鈴谷さんだ!」と、ガッツポーズをすると、
「よっしゃー。これで僕もリア充の仲間入りだー」
一方的に言うだけ言ってハイテンションのまま学校に走り去っていった。
「待ってくださーい」
鈴谷というその女性は由良を追っかけて小走りに走り去った。
鈴谷さんって同じ学校の生徒だったんだ。
……。
羨ましくなんかないからなっ。