小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

恋の結末

INDEX|7ページ/66ページ|

次のページ前のページ
 

「たっくん、おきて……」
「……んん」
 何者かが僕の体を揺すっている。
 しかしその揺すりは僕を魔性のお布団から引き離すには不十分で。
「ふっふーん、たっくん起きないんだ。じゃあ……」
「えいっ」と、何者かがさらに僕の上に飛び乗った。
「うぐっ」
 一気に夢から現実に引き戻される。
「朝だよ、たっくん」
 さすがにこれには目をさまして見る。
 予想道りそこには葵がいた。
「まだねむい」
 そう言って二度寝に突入する為、布団に潜り込む。
 二度寝は健康に悪いらしいが、人間快楽には弱いものだ。
「もう、どうしてまた寝ちゃうの。起きてよー」
 葵は馬乗りの状態になって体を前後に揺らす。
「可愛い幼馴染が起こしに来たんだよ」
 ……なんか気持ちいい。
 こんな状態で前後に揺られ続けたら変な気分になってくるじゃないか。
 もう今や眠気など吹き飛んでいる。
 だが、体はこの気持ちよさをもっと求めようとして。
 そう、人間快楽に弱いものだ。
「ドキドキしないの? ドキドキッ」
 それでもなお抵抗を続けていると、葵はえいっと僕を布団ごと床に引きずり落としてきた。
 ひゅっと一瞬の無重力を感じた後にドンとお尻に強烈な一撃を食らわされた。
 体にまとわりつく布団をはね飛ばして僕は飛び起きた。
 と、ゴツんとでこにまたしても一撃を食らわされた。
「痛ぁーい」
 驚いて閉じてしまった目を開くとそこには葵の目があって……。
 傍から見るとこれからキスをする恋人同士のような。
 ふわとシナモンの香りがした。そして、その匂いは一瞬僕を正気にさせるには十分なもので。
「おおっ。ご、ごめん」
「あわわわわわわわわ」
 顔を真っ赤にすると葵はパタンと倒れ込んできた。
「おい、大丈夫か葵」
 倒れてきた葵を横に寝かせると、ガクガクと揺さぶり起こす。
 むくと起き上がった葵は、
「早く降りてこないと学校に遅れちゃうよ」
 妙に清々しい顔をすると笑いながら部屋を出ていった。
 何もなかった事にする気だな。
 それは少し残念で、でもそれがいいのだという声も僕の心の何処かには未だあった。
作品名:恋の結末 作家名:なお