恋の結末
ちゃぽん。
風呂場からだ。
見ればドアから光が漏れている。
ああ、なんだ。風呂に入っていたのか。
ちょっとした出来心で扉を開いてみた。
安物の洗濯かごの中には安芸の服が放り込まれていた。
ちゃぱあ。
安芸が湯船から出る音がして僕は一瞬心臓が止まった。
やばい。
そう直感した僕は後ずさった。
「うわっ」
つまずいた僕は派手な音を立てて洗濯カゴに手を突っ込っこんでコケた。
こ、これって安芸の服――。
「だれやっ」
がらっ。
風呂場のドアを安芸が思いっ切り開け放った。
「――!?」
流れる沈黙。
驚きを浮かべた瞳がこちらを見つめる。
「え、えっと。これは……」
そこで僕は言葉を詰まらせてしまった。
僕は二つのことで驚いた。
一つはこのシチュエーション。
もう一つは――
耳と尻尾……?
……が付いていたからだ。
こちらを見つめる瞳が揺れた。
こりゃあハエになったお父さんもびっくりだ。
「に、人間じゃない……?」
うすうす気付いていた。ただの人間ではないと。だが、人間ですらなかったとは。
「たく……」
「っ……」
安芸が一歩踏み出してきた。が、僕は一歩後ずさった。
「……出て行って」