恋の結末
こうして迎えた次の日の朝。
準備満タンな安芸に起こされた僕は準備もそこそこに電車に連れ込まれた。
到着までまだ何時間かはある。
「はよ着かへかなー?」
さっきからそればかりを繰り返している。
もう待ちきれないらしい。
今日は絶好の海日和で車窓からは澄み渡る青空が見えていた。
「そういえば、安芸は泳げるのか?」
「ううん」
「ええっ」
スポーツが得意そうなのにな……。
「大丈夫や」
「この中におっきい浮き輪入れてきてあるから」
そう言って指差すはパンパンに膨らんだカバンだった。
他にもいろいろ入っていそうだな……。
この中に買ってあげた水着も入っているのだろうか……?
そんな話をしていると時間はあっという間に過ぎた。
ついに……。
「着いたで!」
「着いたな」
駅の前は一面海だった。
潮の匂いも波の音も風にのってここまで届いていた。
「わぁ〜綺麗〜!」
薄手の夏服に身を包んだ萩乃が砂浜に向かって走り出していく。
「なにしてんの〜。先に海入ってるで〜」
そう言って服を脱ぎ捨てて萩乃は水着姿になった。
夏の強い日差しを受けて輝く海に萩乃は飛び込んだ。
思い切って海に来て良かったと思う。
萩乃のこんな笑顔を見れるなんて。
僕も海に向かって走りだした。
ジャブンとそのまま海に飛び込んだ。
「えいっ」
安芸が水をかけてくる。
その冷たさが今日の暑さと相まって気持ちいい。
安芸の水着姿はとても眩しかった。
見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいスタイルが良かった。
「どうしたんや?」
「な、何でもないよ」
慌てて打ち消した
見とれてたなんて恥ずかしくて言えない……。
「あそこのブイまで競争や」
そう言うと返事も聞かずに安芸は泳ぎ始めた。
仕方なく僕は平泳ぎで泳ぎ始めた。
「勝ったでー」
「あれ?」
安芸はキレイなクロールでどんどん僕との間を開けるとそのままゴールしてしまった。
まだ僕は三分の二ほどしか泳いでいない。
「!? ゴボッ」
!
ブイの近くに浮いていた安芸が突然、姿勢を崩してもがいた。
「おい、安芸」
僕は慌てて安芸に急いだ。
「おい、安芸! 大丈夫か!?」
「ごほっ! だ、大丈夫や」
「まったく……」
「砂浜に一度戻るぞ」
そう言って僕は安芸に背を向ける。
「?」
「乗れよ、砂浜まで運んでやるから」
「……。ありがとう」
安芸を背負うと沖に向かって泳ぎ始めた。
人を背負って泳ぐのって難しいな……。
少しだけ後ろを見ると、若干赤みの差した安芸の顔があった。
「な、なんや……?」
「なんでもない」
夕焼けに染まる海を後にして僕達は電車に乗り込んだ。
やっぱり海に来てよかった。
安芸の水着可愛かったな。
何より楽しかった。