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恋の結末

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 いよいよ夏休みの序盤。この時にどれだけ夏休みの宿題を終わらしているかが全てを左右する。
 この頃から慌ててやり残した事をやり始めるものだ。
 食べ終わった食器が並ぶ食後。
 いつもの元気はどこへ行ったのやら浮かない顔をしてグラスをつついている。
 どうしたんだろう?
「うーん」
 あ、そういえばあれっきり安芸と遊びに行っていない。
 そのことかな?
「安芸……」
「なんや?」
 ぷくー、とほっぺたをふくらます。
 どうみても拗ねていた。
 だから、食事の席で萩乃にさり気なく誘ってみた。
「萩乃、今度どこかに遊びに行かないか?」
「ええっ。ウチと?」
「イヤか?」
「ううん。ぜんぜん大丈夫やで」
 萩乃は太陽が輝くような満面の笑みを浮かべてくれた。
「たくの方から言ってくれるなんて。ウチ、めっちゃうれしいで」
 よかった、喜んでくれたようで。
「それで、どこか行きたいところある?」
「海に行きたい!」
 萩乃は身を乗り出して速答した。
「海か、いいじゃないか。明日にでも行こうか」
「うん!」
 椅子を蹴リ倒すほどの勢いで立ち上がって……
 ガシャーン! と乾いた音が部屋に響いた。
 萩乃が椅子から立ち上がった拍子に食器が落ちてしまった様だ。
「ああ、落としてもうた」
 ちょっぴり泣きそうな顔をした萩乃を見ていると、
「萩乃はそのまま座ってていいよ。僕が片付けるから」
 許してしまうのだった。
「で、でもウチが……」
 それでもまだ片付けようとする萩乃を見ていると、それがなんとも可愛らしくて頭をな でなでしてあげた。
 萩乃の表情に照れくさそうな赤みが増した。
「えへへへへへ」
 それがまた可愛らしくてまた頭をなでなでしてあげるのだった。
 皿の破片を片付け終えると、萩乃が水着を持っていないので買いに行きたいとい出した ので近くのマリンショップに行くことになった。
「……いつまでかかるんだろうか」
 萩乃は大量の水着を抱えて試着室に入ったきり一向に出てくる気配がない。
 萩乃ならどんな水着でも似合いそうだな
 こんなに真剣に水着を選んでるということは、つまり僕に水着を見せたいというこで。
 おおおおおおおおおおおっっっっっっっ。
 突如として僕の頭の中で脳内水着コンテストの開催が決定した。
 とうとう至高の水着が決定する時がきたのだ!
 目の前のカーテンの向こう側からは衣擦れの音がする。
 萩乃にはどんな水着を着せようか?
 マニアックなところでスクール水着もいいな?
 いや、地味だけど競泳用水着もありかもしれない。
 いっそ開放感のあるビキニとか……。
 ニヤニヤ
 ………ハッ
 素早く回りを見渡す。
 誰もいないようだ。
 良かった。
 今のニヤついた顔を見られたかと思ったぜ。
 僕は脳内水着コンテストを中止し別の事を考えることにした。
 !!!!
 すぐに僕はすばらしい事に気がついた。
 一、付き合っている彼女が試着室に入っている。
 一、さらに周りには客はおろか店員さえいない。
 こ、これは!!
 これはもう、ちょっとぐらい覗いたっていいってことだよな……
 そう考えた僕は、ほとんど無意識に試着室のカーテンをサッと開いていた。
 中には着替え中の萩乃がいた。
「……」
「……」
 二人の目線が合わさる。
 一瞬にして空気が凍った。
 ……どうしよう。
 そっと覗くはずなのに目線が合ってしまったよ。
 ひとまず状況を整理してみよう。
 おそらく萩乃はちょうど今、着ようと思っていたのだろう。
 その証拠に、手にしていた水着が地面に落ちて萩乃は一糸まとわぬ姿になった。
 萩乃の肌は真っ白でそれこそ陶器のように壊れやすそうで――
 って僕は何を考えているんだ。
 そんな風に僕が混乱していると、ふと素に戻った萩乃が、
「キャーッ!! いきなり覗かんといてよ!」
「たくのアホーッ!!」
 と言ってピシャッっとカーテンを閉めてしまった。
 ひどい。
 これはあまりにひどい
 その場に崩れ落ちた僕は絶望にうちひがれていた。
 もう二度と海に行きたいなんて言わないよ絶対。
「……」
 家に帰るまで萩乃は一言も口をきいてくれなかった。
「あ、あのさっ。さっきの水着にあってたと思うよ」
「……」
「はぁ、まだこの期に及んでも水着の話するんか……」
「あっ。いや、その」
 なんで水着の話をするんだ、僕のバカ。
 といって自分を責めていると、
「……はぁ」
 ……あれ?
 意外な反応。
「もうこのことはもういいから、海に行く準備しとくんやで」
「忘れとったら承知しいへんからな」
作品名:恋の結末 作家名:なお