恋の結末
今まで絵でもっとも時間のかかった掃除を終えて、僕は中庭を突っ切るようにして歩く。
綺麗に刈り込まれた中庭の植木たちは何だか人間のエゴの象徴に見える。
中庭を出ると一段下に広がるグランドが見えてきた。グランドを横目にして僕は帰路をいそいだ。
グランドでは陸上部やラグビー部といった様な運動部達が元気に活動している。
ふと、僕はグランドを走る一人の少女に目が止まった。
「おや?」
少女は綺麗なポニーテールを左右に揺らしながらハードルを軽くピョンピョンと飛び越えていく。
一瞬、その少女――伊吹と目が合う。
なあんだ掃除を放棄した後、部活に行っていたのか。
まったく、あんな飛び出し方をしたから帰ってきにくいのは分かるけどそんなに照れなくてもいいのに。
伊吹と付き合えたらどうなるんだろうか。
僕が走っているとチーターのはやさで伊吹が追いかけてくる。それで、捕まった僕はムシャムシャと。
ちょっとまてーい。そりゃただの猟奇ホラーじゃないか。
ん? しかもなんで追いかけられる側の視点なんだよ。
僕にそんな趣味はない。……と思う。
そんな煩悩あふれた思考を妨げるかのごとく大きな衝撃音が耳に刺さる。
「きゃっ」
視界が一気にお花畑から現実にフィードバックする。
「伊吹っ」「大丈夫?」「誰か保健室」
周りにいた部員達が慌てて伊吹を保健室に運んでいく。
慌てて僕はその後を追った。
今思うとどうしてあの時に追おうと思ったのかよく分からない。