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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
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ゲイカクテル 第3章 ~ DANGEROUS ~

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「あぁ。一人殺してもらいたい奴がいる。ジュンク・ポランスキーっていう共和国の麻薬王だ。最近オレのシマを荒らして、シルバーブルーとかいう安いヤクを売ってる大ボスだ。今オーランド郡の高級マンションの最上階に住んでる。警察も目を着けているんだが、周囲を取り囲んで部屋の前で押し問答してるだけなんだ。歯痒いったらない」
「シルバーブルーですか。ホランド郡でも流行っています。ロゴスはカンカンです」
「そうなのか。そっちにも流れているのか。オレは帝都ノイキルヒで流行ってるって聞いたがな。学生の間で流行ってるそうだ。次の日残らないのがウケてるらしい」
「ノイキルヒですか。皇帝のお膝元じゃないですか。よく商売できますね」
「どうだ。やってくれるか」
「いいでしょう。やりますよ」
「詳しいコトはデッドリー・ワークスのアンドレアに聞いてくれ。ハッキネン、送ってやれ。それからミニッツ・サンダースがやり遂げたか監視しておけ」
「分かりました。じゃあ、行きましょう、ミニッツ・サンダース」
「分かった」
「今日はここで一泊していけ」
「ありがとうございます。それでは、いってきます」
 アレックスはハッキネンと共に部屋を出た。そして玄関を出て車に乗る。ハッキネンは来た道を戻って、オーランド郡中央駅近くの職業安定所の前で車を停めた。後部座席のドアを開けると、自分はここに残ると言った。アレックスは一人で職安に入っていった。受付で名前を告げると、アンドレアが待っているという。この建物は右側が職安で、左側がデッドリー・ワークスのオフィスになっている。アレックスは左へ行き、小さな金文字でデッドリー・ワークスと書いてあるドアをノックして中に入った。
「ミニッツ・サンダース、久し振り」
「お久し振りです」
 赤毛の巻毛にそばかす顔の社長、アンドレア・マッカーシーだった。他に事務員が三人いる。
「ジュンク・ポランスキーの件で来ました」
「資料はできてるわよ」
「拝見します」
 まずは生年月日と出身地、家族構成が書いてある。アレックスはそれらを飛ばして、近況欄を読んだ。高級マンションが立ち並ぶキンブル通りにある、ウィステアリア・マンションの最上階に愛人と子分とで住んでいる。スケジュールも書いてある。買い出しは二日に一回、子分がする。昼間はテラスで愛人と一緒に日光浴をする。ポランスキーが外に出てくるのはその一回だけだ。どうやらそれが狙い目らしい。
「日光浴の時が狙い目ですね」
「そうね。でも周囲二百メートルと五百メートルは警察が取り囲んでるわよ」
「どこかいい所はないですかねぇ。一応、私の最大射程距離は一キロメートルなんですけどねぇ」
「あぁ、それなら八百メートル先にレノンの丘っていう所があるわ。そこがいいんじゃない?」
「そうですか。あと本当に捕まえるのに生死問わずなんですか?」
「そうよ。そこに書いてあるでしょ。いろんなバウンティー・ハンターが挑戦してるけど、ことごとく失敗しているの」
「プレッシャーだなぁ」
「武器は何を使う?」
「スミノフ狙撃銃で」
「流石ね。いい銃を選ぶわ。狙撃の時、証拠テープが必要だからウチの事務員を一人同行させるわ」
「分かりました」
「いつ決行する?」
「明日。暇がないんで」
「いいわ。やる気ね」
 アンドレアは壁の扉を開き、ズラリと並んだ銃の中からスミノフ狙撃銃をサッと取り出してアレックスに手渡した。
「サイトとか大丈夫?」
「はい。照準は合っています。スコープも付いてるし」
「じゃあ、明日十三時前にレノンの丘に集合ね」
「分かりました。あと試射をしたいのですが、射撃場を借りられますか?」
「いいわよ。一緒に行きましょ」
 アンドレアは机の引き出しから鍵束を取り出して席を立った。二人は事務所を後にし、エレベーターに乗った。アンドレアは鍵を一つ取り出して階数パネルの下のボックスを開き、鍵を差して回して地下一階のボタンを押した。エレベーターは地下へと降りていった。エレベーターを降りると射撃場へと向かった。アンドレアはまた別の鍵を取り出して射撃場の防音扉を開け、電気を点けた。二人は中に入り、アレックスは射撃台の一つの前にスミノフ狙撃銃を持って立った。
 射撃台は最新式で、紙の的ではなく黒幕にデジタル表示される。アンドレアはそのデジタル表示制御室に入り、パソコンを立ち上げた。パスワードを打ち込み、システムを立ち上げてパソコンの横のマイクをオンにした。
「聞こえる?」
「はい。聞こえます」
「立射にする? 伏射にする?」
「伏射で」
「じゃあ、足下の黄線内に伏せて」
「分かりました」
 アレックスは言われた通りにした。アンドレアはパソコンの横のボタンを押して床を上昇させた。床は射撃台の高さまで上がって止まった。アレックスはスミノフ狙撃銃を構えた。
「ポランスキーの部屋のテラスを表示して下さい」
「分かったわ。ちょっと待ってね」
 アンドレアはパソコンを操作してポランスキーのデータを呼び出し、テラスを見つけてアレックスのいる射撃台の前の黒幕に緑色で表示させた。映像は3Dだった。
「ありがとう。距離を八百メートルにして、人物を表示して下さい」
「分かったわ」
 アンドレアはまたパソコンを操作して距離を八百メートルにし、ビーチチェアに横になっている二人を映し出した。
「ポランスキーは手前ですか? 奥ですか?」
「手前よ」
「分かりました。じゃあ、試射します」
 アレックスはスコープを覗き、微調整をしてポランスキーの側頭部に照準を合わせて試射した。弾は側頭部を掠めた。
「下降率の問題か。角度を少し下げるか」
 アレックスは呟き、銃の角度を少しだけ下げて、もう一度スコープを微調整して試射した。今度は見事に側頭部を捉えた。
「よし。感覚は分かった。ありがとう、アンドレア」
「どういたしまして。じゃあ、映像消すわね」
 アンドレアは映像を消してシステムを閉じ、パソコンをシャットダウンした。そして横のボタンを押して床を戻し、マイクをオフにして制御室を出た。アレックスは立ち上がり、二人で射撃場を後にし、エレベーターに乗って事務所に戻った。
「他に何かいる物はある?」
 アンドレアは鍵をしまいながら聞いた。
「そうですね。湿度計と気圧計を貸して下さい」
「そうね。狙撃には必要ね」
 アンドレアは鍵束とは別の引き出しからそれらを取り出してアレックスに手渡した。
「ありがとう。じゃあ、明日十三時前にレノンの丘で」
「えぇ。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
 アレックスは湿度計と気圧計をコートのポケットにしまい、銃を脇に抱えてデッドリー・ワークスを後にした。車に乗ると、ハッキネンに国境警備隊の所まで連れて行ってくれるよう頼んだ。ハッキネンは快諾し、車を出した。車は国境に向かって東へと進んだ。三十分も走らせると国境のフェンスが見えてきた。その前に警備兵がいる。ハッキネンは車を停めた。アレックスは車を降りると、一人の兵士に質問した。
「すみませんが、今の国境警備隊長は誰ですか」
「ウィリアム・ウィロウズ中佐であります」
「ウィロウズ? 元戦車隊の?」
「そうであります」
「私、ミニッツ・サンダース元大佐ですけど、面会できますか」