▽夏彦先生の顔が赤いワケ
行かないよ
あの日から俺は日向と距離を置く様になった。
で・す・が
俺は日向のクラスの担任で、日向は俺の受け持つ生徒なので
毎日顔を合わせない訳にもいかない。
「はぁ・・・」
自然と溜息が口からこぼれた。
「先生おはよ!元気ないねー」
いつも3人グループで固まっている女子生徒の1人が
俺の肩を叩きながら挨拶をした。
「おはよう。ちょっとな・・はは」
残りの2人も追いつき、俺の両腕を2人で掴んだ。
「イケメンな顔が台無しだよ~」
「先生のこと大好きだからそんな顔しちゃ嫌だっ!」
「あ、ありがと」
無邪気な笑顔に連れられて、自然と顔が緩んだ。
やっぱり女子生徒は可愛い。
ごつくないし、素直だし、いい匂いするし。
やっぱ俺、女が好きだ!
小さくガッツポーズをすると、後ろの方に人の気配を感じた。
嫌な予感がする・・
「女子生徒に囲まれて嬉しそうだね。やーらーしー」
背筋がぞくぞくする。
今1番会いたくない奴の声が俺の耳元で囁かれた。
「離れなさい」
「俺が好きって言った時と態度が違う。むかつく」
当たり前だろ?
俺は男だぞ?なんで分かんないんだよ!
「そんなことない」
後ろにいる日向には振り向きもせずに
職員室まで続く長い廊下を早足で進んだ。
「早く授業に戻れ、付いてくるな」
「あ、そーだ。放課後音楽室来て下さい。待ってるんで」
「ちょ、勝手に決めんな!俺は行かないぞ!」
教室に戻ろうとする日向の腕を呼び止めるために掴んだ。
「陸ー!おせーぞっ!」
向こうの方で日向の名前を呼ぶクラスメイトの声が聞こえる。
「ごめん大地!すぐ行く!」
「おい!」
「じゃ、待ってるんで」
それだけ言うと、俺の話もろくに聞かず
日向は小走りでクラスメイトの元に戻って行った。
「はあー・・・あああもう!!」
頭を抱えて、その場でしゃがみこみ
俺は盛大に溜息をついた。
「行かない・・」
ありえねぇだろ。
行くわけないじゃん。
作品名:▽夏彦先生の顔が赤いワケ 作家名:豆もや氏