▽夏彦先生の顔が赤いワケ
真実
「なんもしてません」
「・・は?」
日向の言葉がしばらく理解できなかった。
『なにもしてません』
って、どーゆことだ?
「お前、俺を騙したのか?!」
俺は勢いよく立ち上がり、日向の胸ぐらをつかんだまま
壁に押し付けた。
「お前楽しかったかよ!なんも知らねぇ俺のこと弄んで!」
恥ずかしい、惨めだ。
プライドまで捨ててやったことなのに・・!
こんな糞餓鬼に、いーように弄ばれるなんて。
「怒んないでよ先生、無理やりは悪かったと思ってる。
でも、これだけは聞いて」
「なんだよっ!!」
「キスはした。でも、それは俺から一方的に」
「は?・・なんだよ、一方的にって・・」
「・・もう離せよっ」
日向に手首を掴まれたまま、俺は訳も分からず
ただ、コイツの言葉を待つことしかできなかった。
「俺、先生が好きなんだよ。お見舞いってのはただの口実。
先生に会いたかっただけ」
「お前、自分がなに言ってんのか分かってんのか・・」
「わかってるよ、うるせぇな!」
仕方ないだろ、と弱弱しく呟く日向。
ただでさえ頭の中は真っ白なのに
今の状況を一度に理解するのは俺には無理だった。
作品名:▽夏彦先生の顔が赤いワケ 作家名:豆もや氏