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青いリンゴ

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 交流の中で自然とお付き合いを始めてしばらく経った頃、彼は思い出したように「あの林檎、僕が塗ったんだよ」と切り出しました。彼との恋路にすっかり林檎のことなど忘れてしまっていた私はその言葉に大変驚き、少しの間言葉を失いました。当時は林檎の君などと密かに呼んでいたはずですのに! 古い思考に浸るのが大好きな私の大きな失態でした。
 話を聞くところによると、文化祭の出し物で使う林檎の一つを遊び心で青く塗ったそうなのです。小物のペンダントの色と合いそうだったと言う弁明虚しく、実際は使われなかったそうですが。題名を聞いてみると、私も確かにこの目で見た演劇だったので、すぐになんのことかわかりました。目覚めの口付けをする王子様が出てくるそのお話、実のところあまり期待せずに長椅子へ腰を落としていたのですが、あまりの出来に一人立ち上がってしまいまして、堪えきれないほどの恥ずかしさに、次の演劇が見られないことに惜しさを感じながら体育館を後にしたことを覚えています。
「少し意地が悪いのではないですか」
 私の恥の悔しさで当たった物言いに、焦って彼は言いました。
「それくらいしか思いつかなかった。あの時は一目惚れで、自分ではどうにもできなかったんだよ。持っているのはあの林檎だけだった」
 その様子があまりに可笑しかったものですから私は思わず笑います。「それにしてもタイミングが悪かったものです。青いリンゴという歌を耳にして近かったものですから、妙な勘違いをしてしまいましたよ」と言った私に、彼も笑いました。
「あの時、目まぐるしく表情が変わっていたのはそういうわけだったのか!」
作品名:青いリンゴ 作家名:置き場