青いリンゴ
なんとなく予想していたことですが、私たちは数ヶ月の交際をした後別れることとなりました。なんの不満があったわけではありません。なんの不安があったわけでもありません。ただ仕方ないのだとなんとなくわかっておりました。あの歌は、決してハッピーエンドを迎える歌ではありませんでしたから。
こういう形になるとしても、私はどこまでも幸せでした。彼の手の真っ青な林檎を見たときから、或いはそこに収まってみたいと思っていたのかもしれません。それが少しの間でも叶ったのです。
私たちはお互い、何も言いませんでした。そういえば正式にお付き合いするという話をした覚えもありませんから、いつの間にか近づいて離れていっただけの、それだけのことでした。なんて曖昧な関係だったことでしょう! もっと必死に近づいていたら! 強く求めていたら! と今更浮かんでは消えていくのです。私たちは未熟なのだと言って想い人との会話を語る友人を、大いに見習うべきだったのでしょう。
納得しながらも俯く私に、彼はあのときの林檎を差し出しました。私はそれを手に取ります。やはりどうにも、しっくりこないようでした。でも、彼にはもう押し付けられません。
さようなら、林檎の君。去るあなたにあの歌の最後の詞を。