ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント!
「あ、そういえば、レックさんたちにもこのことを伝えなければなりませんね。」
「まだ仲間がいるのか?」
「ええ。五人で三手に分かれて行動していたんです。」
そして通信をつなぐ。だが返答がなかった。念のためアコにも通信をつなげてみたが、やはり返答なし。通信が繋がらないわけではないので、おそらく向こうが通信に出ない、いや、出れない状態にあるといったほうが正しい。
「う〜ん。大丈夫でしょうかね、二人は。」
「通信が繋がらねぇのかよ?」
「ええ、繋がらないというよりは、向こう側が応答しないといったほうが正しいのですが。」
「今頃何かと戦闘中とか忙しい状態にあるということか?」
「おそらくそうでしょうね。二度と通信に出られない状態に陥っている、なんて恐ろしいことになっていない限りは。」
で、その二人はというと、只今絶賛後ろから迫ってくる大岩から逃走中であった。
「何やってんのさああぁああぁぁあああぁぁぁぁああああ!!!?」
「ごめーーーーーーーん!!!☆」
全力疾走する二人、迫ってくる大岩は、通路の幅とぴったりの大きさなので、隅に隠れるといった対策は取れない。
「ねぇアコ!アコの力であの岩を砕いたりできないかな!?」
走りながらレックが提案したが、アコは同じく走りながら否定した。
「無理!孔を込めてる間に潰されちゃうわよ!」
「あぁ、もうどうすればいいのさ!?」
激走しながら嘆くレック。
「だ、大丈夫よ!こんな風にコミカルな感じだったら、たとえ潰されても紙みたいにぺちゃんこになって終わるだけだから!」
いや、変な希望的観測を持っていらっしゃるようですが、別にそんなことにはなりませんよ?
「は!?」
岩の下敷きになれば人は死ぬ。それは自然の摂理ですから。いくらコミカルな雰囲気だからって、その摂理が覆ることはまずないですよ?
「ふざけんじゃないわよおおおおおおお!!!」
いや、ふざけんなと言われても。というか、そんなこと言っているあいだに、距離縮まりましたよ?
「え゛っ!?」
後ろを振り向いたアコの目には、先ほどよりも圧倒的に存在感が増した大岩が目の前に。こうなると、残酷な描写になってしまうのも時間の問題である。
「くっ・・・こうなったら・・・!」
と、レックが何やら腹をくくったようだ。
「アコ、ごめん!」
と謝りながらアコを抱き上げた。というより、肩に担ぎ上げたというべきか。
「ふぇ!?」
驚くアコそっちのけでレックは棍を地面に突き立てた。そしてその上に乗り、勢いよく跳んだ。
レック渾身のジャンプは、通路上の燭台に手を届かせることができた。
そして時間差でレックが棍に込めていた孔が発動して、地面の突き立てられていた側から炎が噴出し、レックのところまで飛んでくる。それを見事口でキャッチした。
直後、大岩は二人のすぐ下を通過していった。
安堵のため息をつく二人。が、パキッっと嫌な音が響いたかと思うやいなや、二人分の体重を支えきれなかった燭台がポッキリと折れ、そのまま二人は地面に落下。
見事レックはアコの下敷きになりましたとさ。
「・・・なんとか助かったわね。」
「うん、とりあえず良かったよ。」
イタタ、と腰をさすりつつレックは起き上がる。
「それにしてもすごかったわね、さっきの。レック、あんなことできたんだ?」
「まあ、人を担いでやったのは初めてだけど、風来坊やっていた時には追い剥ぎとかに追われていたからね。そうしたのから逃げているうちに覚えたんだよ。」
「ふ〜ん。でもレックなら戦えばよかったのに。そっちのほうが早くない?」
「ボクがそういうのをよく思ってないのは、アコも知っているよね?」
「そういやそうだったわね。まあとにかく、助けてくれてありがと。」
「そういやって・・・。まあいいけど。どういたしまして。さて、さっきの大岩から闇雲に逃げ回ったから現在地がよく――――」
と、突然レックが口をつぐんだ。
「どうしたの?」
「 なんか、聞こえない?」
「え?」
そう言われて、アコも耳を澄ませてみた。なるほど、確かに遠くからバサバサ、と何かが羽ばたいてくる音が聞こえる。
「鳩とかなにかしら?」
「うん、そんな感じの鳥類だったらボクも嬉しいんだけどね。」
バサバサという音の隙間に、キーキーと何かを爪でひっかくような鳴き声が聞こえてきたところで、レックは武器を構えた。
そしてレックの予想通り、通路の向こうから大量のドでかコウモリの群生が襲ってきた。
「ぃいやあああああああ!!!」
アコはコウモリたちに負けじと悲鳴を上げる。
「ちょ、いきなり大声出さないで!コウモリたちは耳がいいんだから大きな音は余計な刺激に・・・」
が、この人は只今聞く耳を何一つ持ち合わせていないようだ。既に隅でうずくまっている。
「あぁもう!」
結局、襲ってきたコウモリたちはレックが全て叩き落とした。おかげで爪やら翼やらで体中引っかき傷だらけになったが。
「うん、なんかゴメン。さっきから足引っ張ってばかりで。」
傷の手当をしながらアコが謝る。
「別に大丈夫だよ。それにしても、アコは動物好きじゃなかったっけ?」
「いや、あんなでっかいコウモリとか無理だから。」
「う〜〜ん。同じ動物だと思うんだけどなあ、ボクは。大きくてもそんなに怖がることはないよ?ボクだって、野宿していて目が覚めたら、どうやら虎の巣穴の近くだったみたいでさ、すぐ近くに虎が眠っていたこととかあったけど、全然平気だったよ?」
「いや、あの大きいとその大きいは違うというか・・・。ていうか何その武勇伝?さらりと恐ろしいこと言ってない?」
「う〜〜〜ん。そうなのかな?風来坊生活では、動物と夜を共にすることは日常茶飯事なんだけど。・・・っと、ツェリライから連絡が来てる。」
レックは通信機を取り出し受信する。
「あ、やっと繋がりましたか。先程から何度も連絡をしていたのに、全く応答がなかったので何事かと思っていましたよ?」
「ああ、ゴメン。ちょっと色々とあって。それで、そっちは何かあったのかい?」
「ええ。別段、火急の報せというわけではないのですが、一応連絡をと思いましてね。」
そして件の話を聞いたレックは、アコにも教えた。
「へぇ〜。新しい仲間が増えたんだあ。」
「いや、別に今回のこの探索を一緒にすることになっただけで、別に仲間確定ってわけじゃないよ?」
レックは軽く否定するが、アコはそんなこと気にしない。
「そんなの、同じようなもんじゃない。会ってみたいなあその二人と。」
無邪気にまだ見ぬお仲間の姿を想像している。
そんなアコの様子を見て、なんとはなしに微笑ましく思ったレックだった。
「じゃあ、その仲間に会うためにも、先に進もうか。」
分かれ道を適当に選び、半ば闇雲に進んでいた時だった。
ゴッ!と音がしたかと思った時には、もう後ろの通路が壁で塞がれていた。あとついでに前も。
「え?いきなり閉じ込められた?」
それと、おまけで天井から槍が突き出し、そのままゆっくりと二人の元へ下りてきた。
「げぇぇっ!どうすんのさ!?これ!!」
レックの力では、塞がった壁を破壊することはできない。
「ここはあたしに任せなさい!」
作品名:ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント! 作家名:平内 丈