ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント!
こんな人っぽい判断を下しているということはゴーレムもどきではない。自分と同じく探索者なのだろう。
それは問題ない。ただ問題なのは、相手が入口のキチガイみたいなやつだった場合である。そんなヤツに、さらに実力が備わっていたら面倒なことになる。
「一応、心構えはしとくかな。」
ルインは刀に手をかけた。
そして、ひと呼吸入れた直後、曲がり角の向こうへと飛び出した。
その先に待っていたのは、こちらと同じように武器を構えていた相手だった。
そして、そこからルインは固まり、攻撃することはできなかった。
なぜなら、その相手というのが、どこからどう見てもまだ10代前半の少女だったからである。
「・・・・こんにちは。」
「・・・・あ、ども。こんにちは。」
とりあえず挨拶をしといた。
互いに敵意がないことを確かめ、双方落ち着く。
落ち着いてからルインは、いま自分の目の前に立っている少女に興味を抱いた。
あ、別にそれはルインがロリコンだからというわけではない。この少女に対して色々と疑問が生まれてきたからだ。
ここに居る目的、はまあわかるとしても、いくらなんでも一人で来るのは蛮勇すぎる。連れの人はいるのかとか、さっきの武器の構えはなかなか堂に入っていた。多分それなりに経験は積んでいるのだろうが、ルインと向かい合ったときは明らかに怯えが混じっていて、とても戦いなれたそれとは思えなかったとか。
とりあえず一番気になることを聞く。
「君のその武器。えらくでかくない?ダガー?にしては若干形が違うかな。どちらにせよ、君が扱うには大きすぎるような気がするんだけど。あ、自己紹介遅れたけど、僕はルイン。」
唐突にそんな質問を投げかけられ、聞かれた方は戸惑いながらも素直に説明してくれた。
「初めましてルインさん。私の名前は、ハルカといいます。そしてこれは桜鼓(おうこ)という、特別なクナイなんです。」
「クナイ?にしてはデカすぎない?」
桜鼓と呼ばれるその極デカクナイを、今ハルカは背中に背負っているわけだが、背負っているだけで完全に背中が覆われ、常時ガード状態になっている。
「確かに大きいですけど、でもとても軽いんです。持ってみますか?」
そう言ってハルカは桜鼓をルインに手渡した。
普通自分の武器を初対面の人に渡すというのは考えられない行為なのだが。戸惑いながらもルインは受け取った。そして驚いた。
軽い。確かにものすごく軽い。どのくらい軽いかって言ったら、そりゃもうその見た目からは想像できないくらい軽い。ほんと、びっくりするほど軽いのだ。
「これは、僕の刀より軽いとかいうレベルじゃないね。」
この大きさでこの軽さって、一体素材は何で出来ているのやら。謎は却って深まってしまった。
とにかく、このままハルカと別れるのもなんだったので、なんとはなしにツェリライに連絡を取ってみた。
「もしもーし。あ、ツェル?ん?ああ、僕自身は特になにもないんだけどさ、ちょっと人と会ってね。 ん?いや、あの入口にいたキチガイ君の親玉じゃないよ。なんかまだ成長真っ盛りな女の子。で、一人でいるからさ、こんな女の子が一人じゃ危ないかなって思って一緒に・・・ え?その女の子の容姿?ん〜っと、身長はだいたい150弱ぐらいで、服装は若緑っぽいゆったりした感じで。 って、本人に聞いたほうが早いか。ちょっと待ってて。」
と、一回通信をやめると、ルインはハルカに質問する。
「ごめん、なんか唐突で悪いんだけど、僕の仲間がなんかハルカちゃんの見た目を聞いてきたから、なんか特徴的なところってない?」
いきなり自分の特徴的な部分と言われても・・・。それでもハルカは考えて答えてくれた。
「わたしの外見的な特徴ですか・・・?そうですね、桔梗の花をあしらった髪飾りをつけていて・・・それから・・・・ あ、そうだ。桜鼓という大きなクナイを持っています。」
それを聞いて、ルインもそういやそうだと手を打った。
「ほい、只今復帰しました。えっとね、頭に桔梗の花の髪飾りつけてて、桜鼓っていうでっかいクナイ持ってるよ。」
「・・・だそうですが、カウルさん。」
通信からの情報を聞いたカウルは胸を撫で下ろした。
「ああ、間違いない。俺の連れだよ。」
「10代前半の女子連れたァ、また何か妙な一行だな。」
「ああ、まあ色々とあってな。」
何がともあれ、同行者の安否が確認できたので一安心だ。だが、それで問題解決というわけにはならない。二人が再開するためにはまた入口まで戻るのが最善だが、その入口が何処にあるのかはっきりしない。
え?来た道を戻ればいい?それができれば迷路で迷子になったりしない。
「よかったねハルカちゃん。お連れの人は僕の仲間のところにいるみたいだよ。」
こちらも同行者の安否を確認し、胸を撫で下ろした。そして、これからどうするかを考える。
と、ルインがひらめいた。
「ねぇ、ハルカちゃん。君とお連れの人は、当然この奥に眠るお宝、ひいては賞金が目当てで入ってるんだよね。」
「あ・・・・えっと、その・・・。」
多分答えはYESなのだろうが、質問の内容があまり気のいいものではないためか、返答に詰まる。
「別に気にする必要はないと思うよ?僕だってそれが目的でここにいるんだし、そもそもそんな風な応募があったんだから、恥じる必要なんてないよ。」
「あ、はい。」
ルインがそう笑いかけると、さっきから緊張しっぱなしの顔が、ようやく少し笑顔になった。
「で、話の続きだけど、ハルカちゃんたちは500万セラまるまる欲しい?」
「いえ、わたしたちは旅の道中に金銭が底をついてしまいまして・・・それで。」
「やむなくこの危険な匂いがしまくる場所へ来たと。」
「はい。」
「だったら大丈夫かな。僕の提案なんだけど、ハルカちゃんたちと僕らで共同作業しないかなって思ってさ。どう?」
「えっ?」
「君からはずる賢い感じとか敵意は感じられないし、きっと向こうも同じ感じなんだろうね。だったらさ、賞金は山分けにして、一緒にみんなで宝探ししたほうが危険度も下がるんじゃないかなって思って。どうせ危ない橋を渡るんだったら、みんなで渡りましょう的な考えだよ。どうかな?」
ハルカは悩んでいる様子だ。まあ無理もない。なんだかんだ言ってあってまだ数分しか経っていない。そんな相手と共同戦線を張るというのは不安を覚える。
でも、同時に嬉しいなという思いもあった。二人共、大抵のことなら一人でも対処出来るだけのスキルはあるが、だからといって全てが大丈夫だというわけでもない。現に今二人ははぐれてしまっているし。
だから、この提案はハルカにとっては嬉しかった。
その思いと不安、この二つを秤にかける。少しの時間を要したあと、前者の方に天秤が傾いた。
「ルインさんがそれでよろしいのなら、喜んでお願いいたします。」
ハルカは折り目正しくお辞儀をした。
「よし、じゃあ向こうにも伝えとかないとな〜。」
そして、ツェリライ側にもそれを伝えた。当然驚きはしたが、こちらは先に一戦交え、互いに敵意がないことを確認済みであったため、割とすんなり承諾した。
かくして、ルイン御一行様とハルカとカウルペアは、共に行動することになった。
作品名:ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント! 作家名:平内 丈