ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント!
「万所に眠りしその秘宝。数多る壁を打ち破りしその拳は!」
ディルカーンは拳にありったけの孔を込め、解き放った。
「はぁぁぁぁぁ! 新羅破戒拳(しんらはかいけん)!!!」
渾身の一撃。それはカウルをまっすぐ捕え、大きく吹き飛ばした。
通路向こうの壁まで吹き飛ばされ、叩きつけられたカウルは、土煙の中に消える。
「どうじゃ、我が最強の拳は。流石に聞いたであろう?」
土煙の向こうに、返事は来ない。だが、突如としてそれは激しく舞い上がり、中から高速で突っ込んでくる影があった。
「ぬぅ!?」
ディルカーンは両腕を交差させ、カウルの攻撃を防御する。
「なんと、我が拳を受けなおかかってくるか・・・。」
その問いには答えず、カウルは再び姿を消すように高速移動をはじめる。
「ふ、この老いぼれの目を侮るな。いかに君が速く動こうとも、来たるその一瞬を捉えればそれで事足りる。さあ来い!」
ディルカーンは目で追うのを止め、その一瞬を捉えるため気配を感じることだけに神経を注ぐ。
「 そこっ! 後ろじゃあ!!」
その一瞬を捉えたディルカーンは、振り向きざま反撃を叩き込んだ。
それは見事なまでに空振りした。いや、もうホントに10点満点をつけてあげたいくらいに綺麗な空振りであった。
「なん・・・だと・・・?」
そしてカウルは、さらにその後ろから姿を現した。
「後ろ?まあ確かに後ろだな。向きは反対だったが。」
「ぬぅお!?」
完全にとられた背後。どうあがいても間に合わない。
「少し痛いヤツ使わせてもらうぞ。」
カウルは両腕を後ろに下げ、電撃を溜める。そこから一気に両手の掌底の突きを放った。
「電閃(でんせん)!!!」
ディルカーンに突き刺さったその電撃は、勢い止まらず、体をまっすぐ貫いた。
「勝負ありだな。大丈夫か?じいさん。」
ディルカーンは倒れたまま動かない。だが意識ははっきりしているようだ。
「最近の若衆は、こんな年寄りをいたわる思いやりを持ち合わせていないのかな・・・?」
「いや、年寄りだと侮るなと言ったのは他でもないあんただろ。まあ少し強すぎたかもな。悪かったよ。あんたなかなか強かったよ。」
「ふん。戦闘は関門外だが、君のような手練に評価されるのは誇らしく思うべきかな。ともかく、わしは敗北した。先を行きたまえ。」
ディルカーンは潔く負けを認める。その言葉には、悔しさも混じってはいたが、清々しい潔さがあった。
「ルインさん。次、右奥に三体です!」
「はいさ!」
ハルカの言葉通り、右の通路からゴーレムが三体飛び出てきた。それをルインは振り向きざまたたっ斬る。
「後ろ、来ます!」
「ほい、任せたよ!」
「はい!」
ハルカはゴーレムから繰り出される一撃をひらりとかわし、上に飛び上がった。
そこからゴーレムに向かって一直線に滑空し懐へ飛び込み、一気に切り上げた。
「古阿滋斬(こあじさし)!!」
この技を受けたゴーレムは、綺麗に縦真っ二つになった。
「ふぃ〜、片付いたっと。それにしてもすごいね。戦闘能力もさることながら、ずば抜けた敵感知能力とは。」
ルインが感心する。ハルカは少し息を切らしながらも笑顔で答えた。
「はい、幼少の頃にそういった修練を受けましたので。それに、私は敵の気配よりも、風を感知しているんです。」
「風?ということはもしかして、ハルカちゃんは風使いなの?」
「はい。そうです。」
「なるほどねぇ。だからその大きさの割にはやたらと軽い得物でも十分攻撃力を出せるわけだ。」
「そうですね。最も、私にとってはそれほどまで嬉しいことではありませんが・・・。」
ハルカの顔が少し沈む。
「っと、女の子にとってあんまり強い齢の話は好きじゃないよね。ごめん。ちょっとデリカシーに欠けてたかな。」
「いえ、気にする必要はありませんよ。それよりもルインさん、少し失礼します。」
ハルカがルインの腕を取る。見ると腕に怪我をしていた。
その傷にハルカが手をかざす。すると、暖かい風が寄り添い、傷が回復した。
「おー、ハルカちゃんもヒーリング使えるんだ。」
「ええ。最も、こうした小さな傷しか直せない、応急処置程度のものですが。」
「またまたご謙遜を。今の回復速度を見る限り、どんな怪我も完全治癒とはいかないだろうけど、大抵の怪我には対応できるんじゃないの?とにかく、ありがとう。それじゃあ、先に進もうか。」
「はい。」
しばらく進むと、今までで一番大きなフロアに出た。先に進めるような通路はない。だが、その奥に祭壇らしきものが見えた。
「お、ついに辿り着いたかな?」
「みたいですね・・・!」
声を弾ませるハルカ。二人は祭壇に向かって走り出す。だが、近づいたその時、地響きがなり、足場が揺れ始めた。
そして突如現れたるは高さ10mはありそうな巨大な像だった。
「・・・うわーお。これってあれですか?秘宝を守る番人ってやつですか?」
「そうみたいですね・・・。どうしましょう?」
「そりゃ戦うしかないでしょ?あいつ倒さないとお宝ゲットできないって言うんなら。」
何気ないふうに答えるルインに、ハルカは驚いて止めた。
「そんな、無理ですよ!」
「無理でもなんでも・・・」
二人の前に立ちふさがる巨像が、手にした片手斧を振り上げた。
「あちらさんは既に殺る気マンマンみたいですしぃ!!?うわぁーお!!」
巨像が放った一撃は、間一髪で飛び退いた二人がいた場所を粉微塵にした。
「ああ、当たったら即ゲームオーバーっぽいねこれ。」
「やはり一旦下がって、せめて他のみんなが集まってからにした方が。」
「いやぁ、そうしたいのは山々なんだけどさ。後ろ見てみ?」
言われるままハルカは後ろを見た。その目が見た光景は、巨像が先ほど放った一撃により飛び散ったがれきが、見事なまでに出口を塞いでいるというものだった。
「・・・・・・・」
「閉じ込められちゃった!!アハッ☆」
もう笑うしかないルインと呆然とするハルカ。
「ど、どどどっどどどどどどうしましょう!?」
混乱するハルカ。だがルインは落ち着いてそれを宥める。
「まあ落ち着いて。あんだけでかい図体だから、一撃の威力はでかいけど、その分動きはノロい。冷静に見切れば避けるのはわけないよ。戦いにおいて冷静さを欠くのは半分以上自殺行為だからね。ヤバイと思ったらまず落ち着くこと。」
「は、ひゃい。」
なんか若干ろれつがおかしいが、とりあえず落ち着きを取り戻したようだ。
「よし。でもどうしようかねえ。僕もハルカちゃんもああいった人外相手だとぶっちゃけ骨が折れる。願わくば僕らが逃げ回っている間に誰か来てほしいな。」
と、その時。出口を塞いでいた瓦礫が爆発した。
そこから現れたのは、アコとレックペアだった。
「アコ、さっきから随分と技を使っているけど、大丈夫?」
「へーきよ、これくらい。まだまだいけるわ。」
「そうか、なら良かった。 ・・・ってええ!!?何さこの巨像!?」
驚く二人を見てルインは喜んだ。
「おお!噂をすればなんとやらだよ!」
「ルイン!一体これは!?」
「見ればわかるでしょ!これが最後の関門。お宝を守る番人だよ!」
「ということは、この奥に秘宝が!?」
「多分ね!というわけで手伝って!」
作品名:ACT ARME5 レッツ・トレジャーハント! 作家名:平内 丈