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井上 正治
井上 正治
novelistID. 45192
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仮想の壁上

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しかし、なぜ有効需要のない電波部品が私企業によってかなり長期にわたって継続的に供給されるのでしょうか。普通であれば、有効需要のない成果品を製造し続ける私企業なんて想像することができないと思うのです。製造しても換金できなければすぐに倒産して、私企業のほうが市場から淘汰されてしまうと思うからです。そうなればその時点で電波部品の供給が停止してしまうことになるのではないでしょうか。そうならないのは製造のために必要な資金が枯渇しないからとしか考えられないのではないでしょうか。なぜ資金が枯渇しないかというと、やはり資金が供給されるからであると考えざるを得ないのです。では、それは一体どこから供給されるのでしょうか。
一般的には、成果品の対価として成果品とは反対方向に資金は流れていくものではないでしょうか。しかし成果品に対して有効需要がない以上この資金は成果品の対価として供給されるものではないということができるのではないかと思うのです。一つの方法としては、私企業が実体経済の中の企業活動で得た利潤の一部を資金として、電波部品を供給する方法があるのではないかと考えられるのではないでしょうか。しかし、利潤の一部の少なからぬ金額が消失した場合に決算報告上株主や監査人に対して合理的な説明ができるのかという問題があるのではないかと思うのです。経理上は利潤を過少に計上するか、経費を過大に計上して余剰資金を創造するしかないのでしょうが、単年度であればまだしも景気変動や社会変化に伴う企業業績の波を乗り越えて、相当長期にわたって報告や監査、税務調査の目を潜り抜けることが必要と考えられますが、非常な困難を伴うのではないかと思うのです。企業業績に陰りが出た場合、経営責任を回避するためには少しでも利潤をかき集め、精いっぱい業績に反映させたいと考えるのが実体経済というものではないでしょうか。その場合に利潤の一部を消失させる決算は絶対にできないのではないかと思うのです。電波部品供給のための資金を含む流動性の流れの中で、入り口が市場経済に直結していれば出口まで市場経済の法則が付いて回ることになるのではないでしょうか。
そうであるならば、入り口の部分で必ず余剰資金を創造するしかないのではないかと思うのです。すなわち、入り口部分で無から有を生じることが必要だということになるのではないでしょうか。天から降ってくるような、紐のついていない資金であれば、市場経済の影響を受けることなしに自己完結的に支出が可能ではないかと思うのです。その時に初めて、電波部品の供給に消費できるような資金となるのではないかと思うのです。無から有を生じるような資金と言えば、市場経済活動を行うまっとうな私企業であれば、公的資金すなわち税金以外に考えることはできないのではないでしょうか。では、私企業に公的資金を注入するような方法があるのでしょうか。
私企業に公的資金を注入するとなれば、官から民への資金の流れということになるのではないでしょうか。しかも、有効需要のない成果品の供給に使用する資金ということであれば、官に対して事前の使用計画を添付した申請も不要、結果報告も不要という性格の資金ということになるのではないでしょうか。個別の私企業が官を相手にして、そのような資金を公開の下に入手することは不可能ではないでしょうか。従って、非公開で入手するということになるのではないかと思うのです。すなわち、大きな官需の中の一部としてそのような資金を発生させ、全体を受領するときにその一部として受領するという方法ならば可能なのではないかと思うのです。あくまで開示される部分は大きな官需に対する対価としか見えないので一部の資金としては非公開と同様の効果が発生するということになるのだと思うのです。
大きな官需の中でそのような資金を発生させる方法について想像してみると、二つあるのではないかと思うのです。一つは、もし成果品としての電波部品の使用方法が人間の両耳の中に埋め込む以外にもあるのだとすれば、その単価を過大に見積もって請求し、実際の単価との差額を余剰資金とすることができるのではないでしょうか。二つは、もし成果品としての電波部品の使用方法が人間の両耳の中に埋め込む以外にないならば、他の成果品を製造する工程を膨らましたり、その単価を過大に計上したりして架空の経費を請求して余剰資金とする必要があるのではないでしょうか。官需と言ってもすべてが競争入札を行うわけでもないし、すべて仕様書を官が作成して工程を管理できるとも限らないのだと思うのです。その場合には、過大請求の事実が発生しても官がその不法行為を指摘することも、費用の支出を拒否することも不可能ではないかと思うのです。もし、何らかの予想外の方法、例えば内部通報などで漏れたとしても、大半の先進国でみられるような厳しい社会的制裁を受けることはないのではないでしょうか。この資金獲得業務に携わった人たちの作為は本人の利益のためでないのは明らかだとおもうのです。何しろ獲得した資金は企業のものになるのですから。一方企業のほうも、国民の両耳の中に埋め込まれる電波部品を作っていることが公表されることさえなければ、一般的な経済活動上の不正利得の獲得ということで、司直の返還請求に応じることになるのではないでしょうか。あとは企業の信用に多少傷が付くことはあるかもしれませんが、それで企業の存立の基盤が揺らぐことはないと思うのです。せいぜい報酬何か月分かの減額くらいでお茶を濁して終わりということになるのではないでしょうか。しかも、公金の不正取得くらいで代表者が刑事責任や民事責任を問われる、あるいは、道義上の責任を取って執行部が辞任するなど、ありえないことではないでしょうか。この国では、強いものを守る、不正は経済活動の必要悪、組織のための不正は指摘されなければ不正ではない等々の慣習がしっかりと根付いているからであると思うのですが、やはり、社会の進歩や発展を阻害する要因になっていると思うのです。人々の経済活動を、背番号を打ってでも把握しようとしない社会の後進性が感じられるのではないでしょうか。電波部品を医療施設に配送する場合も、これに似たような操作が行われるのではないでしょうか。
一方、これほどの規模の私企業では、人材活用の観点や退職補充、技術革新など私企業の長中期経営方針のための合理化や人員配置が不可欠ではないでしょうか。そのため、この資金獲得業務においても人的資源の入れ替わりが不可欠ではないかと思うのです。その場合にこの業務の継続性をいかに確保していくのかが重要ではないでしょうか。そのための企業統治には何が必要なのかについて想像を膨らませてみたいと思うのです。
 第9
作品名:仮想の壁上 作家名:井上 正治