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井上 正治
井上 正治
novelistID. 45192
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仮想の壁上

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きちんと予算を組んで電波部品を供給することが不可能なら、予算を組んでいることが見えないような方法で電波部品を供給することができないものでしょうか。予算は、予算科目に従って事業内容が見えるように組んでいくのが原則ではないかと思うのですが、例えば、他の事業の一部として電波部品が供給できれば、表面上は税金が投入されていることが見えなくなるのではないかと思うのです。その場合、電波部品の供給は、成果品の製造という工程が他の工程にまぎれている必要があるのではないでしょうか。当然のことながら、税金を投入する以上、情報開示が原則である公的な団体でしか製造できないという制限があると思うのですが、全く可能性がないわけではないと思うのです。しかし、精密、かつ、高機能な電波部品は製造工程が複雑と思われるため担当職員に高度の熟練が必要なことや、高度な制御が必要な製造機械の減価償却や設備更新など、公的な団体が継続的に供給するには非常に多くの困難が横たわっていると思うのです。このように想像すると、いくら製造工程を見えなくしても公的団体では、電波部品の製造が紛れてしまうような製造設備を想像することができないのではないでしょうか。従って、このような方法も現実的には不可能ではないかと思うのです。
また、国家機構の中には予算が不明、組織の名称、人員、職務内容等も不明、つまり存在自体不明というような組織が存在することもあるようですし、何に使っても領収書もいらないような税金の使い方もあるようです。しかし、電波部品の供給については、例え製造部門が不明であっても成果品として出荷する出口まで不明というわけにはいかないように思うのです。なんといっても、すべての人間の両耳に埋め込まれるほど広範に流通する必要があるのですから。公的な団体であれば人員の異動もあるでしょうし、設備の管理もあるのではないかと思うので、どうしてもそこから成果品が社会に供給されるときの接点が必ず市民の目に触れると思うのです。何しろ、かくも広範に流通する成果品が対価なしに引き渡されるのですから。また、存在不明の組織に対して継続的にかなり多額の公費が支出される仕組みもこの国ではかなり困難ではないかと思うのです。あくまで想像の範囲ですが、公的な団体に税金を直接つぎ込んで電波部品を供給することは不可能としか思えないのです。
それでは、電波部品の供給が国有企業からではないとすると一体どこから供給されているのでしょう。それはまず、出生した人間の両耳に埋め込むとなると少子化傾向の著しいこの国でも大量に製造する必要があると思うのですが、その能力のあるところということになるのではないでしょうか。風雨をしのぐ建屋や必要な量を生産するための機械設備、それを動かす動力はもちろんですが、原料の仕入れとその在庫管理、加工、組み立て、成果品の保管設備などがあって初めて製造することができるのではないでしょうか。数十年以上継続的に両耳の中に埋め込むために供給するということになると、数十年にわたって人的資源や物的資源、その他運転資金等を確保する必要があると思うのです。そうなると、とてもひとりの人間、あるいは数十人程度の集団というわけにはいかないのではないかと思うのです。しっかりとした組織が、統制のとれた指揮命令系統の中で活動を行って初めて電波部品の供給が可能になるのではないかと思うのです。まさに永続性を持った企業活動そのもの、それも小さからぬ企業活動と言えるのではないでしょうか。
次に、高機能、かつ、精密な電波部品を作る能力のあるところということになるのではないでしょうか。電波については一部の周波数を除き周波数帯で区分した割当制をとっているようです。誰でも自由に参入できる分野でないのはもちろん、電波を利用しようとすればしかるべき監督部署の許可が必要なのではないかと思うのです。しかし、人間の両耳に埋め込む電波部品に限って言えば、割当制の範囲に含まれる周波数ではないのではないかと思うのです。もし割当制の範囲内の周波数であれば、その部分には電波部品製造私企業以外では誰も許可が得られないので、自由経済社会ではすぐに社会問題になるのではないかと思うからです。今までそのような問題が起こったなんて聞いたことがありません。それはそれとして、電波に関する知識が貧弱と思っている誰が考えても、電波部品製造にはかなりの専門知識が必要ではないかと思わざるを得ないのです。電波に全く関係のない私企業が片手間に製造できるようなものではないような気がするのです。しかも、両耳の中に埋め込むとなると、大きさに制限があるのではないでしょうか。はっきり言わせていただくなら、世界に通用する微細加工技術がないと製造不可能ではないかと思うのです。電波部品を供給している私企業には、その技術があるということなのでしょう。
さらに、製造した電波部品を医療施設に配送する必要があると思うのですが、製造した私企業が直接配送することはできないのではないでしょうか。というのは、電波部品は、医療施設では医薬品名で保管されているのではないかと想像したからです。電波部品の製造私企業が、医薬品名の包装をすることは違和感が強すぎて関係者の疑惑を招くのではないでしょうか。電波部品に医薬品名の包装をするのは、やはり化学薬品関係の私企業ではないかと想像するのです。電波部品の製造私企業が、化学薬品関係の私企業に電波部品を配送し、それに医薬品の外装を施すことができれば、それが最もよいのではないでしょうか。さらに想像するならば、配送と言っても時代によっては簡単なことではなかったのではないでしょうか。電波部品の歴史を考えるならば、電波部品製造私企業と電波部品に医薬品の包装を施す私企業は、かなり近接した立地条件が必要だったのでは、と非常に強く想像できるのではないでしょうか。
また、この国には技術の改良はあっても発明はないと言われてきたのではないでしょうか。電波部品を両耳の中に埋め込むというような技術がこの国で生まれたということは非常に強い疑問なしに考えることができないと思うのです。少なくとも、一から十までこの国で完成した技術であるとは、非常に強い困難なしには考えることはできないように思うのです。それを前提に非常に強く想像するならば、電波部品を供給している私企業はこの国以外の私企業と非常に強固な取引関係があると想像できるのではないでしょうか。それも、数十年以上前にはすでにそこまで先進的な活動をしていた私企業ということになるのではないでしょうか。しかも、業務内容から想像すると、合併や買収にもまれることもなく、相当長期にわたって安定した経営を続けてきた私企業ということになると非常に強く考えることができるのではないでしょうか。
 第8
作品名:仮想の壁上 作家名:井上 正治