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井上 正治
井上 正治
novelistID. 45192
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仮想の壁上

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出生は母子ともに一般的には病気ではないので医療行為を受けずに行われる場合が大半です。そのためこの国では出生に係る費用は医療費として健康保険から支給されるのではなく、全額が本人に請求され、健康保険からは一定金額が出産育児一時金として本人に支給される仕組みになっているのではないでしょうか。しかし、大半の出生は病気ではなくても医療技術者の立会いの下に医療施設で行われているので、その場合には電波部品が埋め込まれる場面の実現が考えられますが、中には医療施設以外の場所で行われる出生もあり、その場合には高度な能力を持った医療技術者の立会いがありませんので、そこで出生した場合は電波部品が埋め込まれていない人間も存在する可能性があるのではないでしょうか。そういう人間に対しては、そのものずばり、耳の疾病を治療する時やその他意識を失った時に行われる治療のときに、たとえ激痛があったとしても担当する医療技術者の裁量で医療行為に紛れて埋め込むことになるのではないでしょうか。いずれにしても、医療技術者の関与が非常に強く想像できるのではないでしょうか。
もしも、この国でこのようなことが行われているのであれば、この違法行為の継続性を確保するためにその者の身分保障は非常に強固に行われる必要があると思うのです。身分保障が不安定であれば、大半の人間が気付いていない本人の身体的瑕疵についての情報が、この情報開示が進んだ社会では容易に当事者から直接公表される恐れがあるのではないでしょうか。このためではないかと想像するのですが、医療技術者の身分保障は、本人については恒常的な医療技術者不足という社会制度で確保されているのではないでしょうか。また、本人の退役に伴う後継不在という形で身分保障が破たんする可能性があると思うのですが、それに対しては、よほど試験で高得点を取る人は別として金があれば医療技術者になれる、あるいは、金がなければ医療技術者になれないと社会に理解されている制度で、後継の身分保障も講じられているのではないでしょうか。高い危険性は、高い報酬をもたらすというのは自己責任に支えられた自由競争社会の原則であるといわれています。また、秘密を守るということは、その秘密に値する対価を得るということでもあります。なぜなのか不明ですが、この国では、高度な能力を持った医療技術者は超が付くほどの高収入であると一般的に考えられています。これが、高い危険性を冒すことと秘密を守ることの結果でないことを祈るばかりです。飴と鞭は車の両輪であるとは言われますが、高収入が飴なら、鞭は当然その高い危険性に立ち向かわせ、その秘密を守らせるに値するほどの恐怖ではないでしょうか。
医療施設で電波部品を埋め込むことが可能な極わずかな機会に、即座に電波部品を調達するためには医療現場において電波部品を保管しておくことが必要になるのではないでしょうか。電波部品を両耳の中に埋め込むという困難な作業は多分医療技術者の関与が想像されるにしても、直接作業に関与する医療技術者だけで電波部品の受け取り、保管場所の確保、在庫管理までできるとはとても考えられないのではないでしょうか。電波部品の管理は、直接作業に関与する者を含む多数の医療関係者の協力が不可欠ではないでしょうか。しかし、医療施設のすべての関係者が協力していると考えることもできないと思うのです。というのは、この違法行為はあくまで被害者には秘密に行われており、その秘密を守るために協力者に利益を供与する必要があると思うのですが、すべての関係者が協力した場合、利益を供与するための差別化が困難になると思うのです。してもしなくても同じであれば、よほど違法行為に手を染めるのが好きな人間以外は、こういうことは絶対にしないのではないかと思うのです。医療関係者の中で一部の人たちだけが電波部品が両耳の中に埋め込まれていることを知っており、その人たちだけが他者より高い報酬を得るために協力していると考えるのが自然ではないでしょうか。
従って、知らない人がいる以上、電波部品という名称で堂々と保管しておくとは思えないのではないでしょうか。医療施設で保管されている医薬品は、病気の治療に必要なために保管されていると思うのです。つまり、患者の需要があるので医薬品会社が製造し供給していると思うのです。商品経済社会では、需要と供給に従って商品が流通することになっているのではないでしょうか。電波部品の場合、埋め込まれた人間からの需要があったために保管しているということになりそうですが、埋め込まれた人間がその存在を知らないのですから、需要があったとはとても考えることはできないのではないでしょうか。しかし、医療技術者が埋め込んでいるとしか考えられない以上、供給はなければならないのではないでしょうか。この不自然な流通をする電波部品は、やはり何らかの薬品名のような、医療施設で違和感のない名称で保管されているに違いないと思うのです。電波部品は、実は医療施設に保管されてはいるが、医薬品でも商品でもないという性格のものなのではないでしょうか。
 第4
この国で出生した人間の両耳に電波部品が埋め込まれていると仮想した場合、電波部品を医療施設に提供しているのは一体誰なのでしょうか。医療施設に保管されている電波部品の使用状況を把握している医療関係者の要請に基づき、医療施設から不定期に請求があった際速やかに提供できるところは誰なのかということになるのではないでしょうか。医療施設に提供するための接点があるのは配送業者なのでしょうが、企業や個人から注文を受けて多様な商品を配送する専門業者や特定の製造業者の下請けとして製造品のみの配送を行う業者が電波部品だけ医療施設に配送するのは不自然だと思うのです。医療施設に接点を持つ配送業者が配送するのは一種類だけではなく、多種類の医薬品であろうと思うのです。また、商品ではない以上対価を得ることができないので、電波部品製造業者が直接医薬品名に偽装した電波部品を無料で配送するとも考えられないと思うのです。電波部品が医療施設においてひそかに保管され、一部の協力者しかその存在を知らないことからすると、医薬品の配送業者が配送品である医薬品の中に紛れて電波部品を配送するのがきわめて自然ではないでしょうか。それから考えると、医療施設に医薬品を提供しているところが、電波部品も提供していると非常に強く想像できるのではないでしょうか。
作品名:仮想の壁上 作家名:井上 正治