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ペンギンズ・ハッピートーク~空想科学省心霊課創設の経緯~

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「で、でもそれだけでっ」
「まだあります」
 エンデは腰に両手を当てて、続ける。
「実はあたし、一度お宅に伺ってるんですよね。覚えてません? 夢姫さんの後輩だって言って、あがらせてもらったんですよ。それで、おばさんが席を外した時に、家の電話の着信履歴も確認させてもらいました。……やっぱり、あの晩、公衆電話からの着信があったことが分かりました。おかしいでしょう? あの時刻あなた方は、家の電話にかかってきた公衆電話からの着信を受けながら、一方ではそれぞれの携帯電話でやり取りをしていた……ああ、今ごろ記録を削除しようとしたって無駄ですよ。警察はそんなことくらい簡単に調べられます。ただ今回は、タクシー運転手の証言があったため、そこまでしようとしなかっただけなんですから」
 おじは既に観念した様子で頭を下げているが、それでも尚、おばは食い下がった。
「そんなのは決定的な証拠ではないんでしょうっ? 全部ただの空想じゃない!」
「おや、心外ですね。決定的な証拠ならありますよ」
「なっ」
 絶句したおばと、その隣で途方に暮れた様子のおじのすぐ傍へ、エンデは近づいて行った。そして、二人の耳元へパペットを寄せて、その口を動かした――
「ぎゃああああああああっ」
 ペンギンが囁いた何事かを聞いて、夫婦は叫んだ。今まで青ざめていた顔が、今度はどんどん白くなっていく。血の気が失せていく……。
「ごめんなさい……ごめんなさい、夢姫ちゃん……」
 おばが、色を失った唇で、呆けたように呟いた。
「でも、でも……仕方なかったの……お父様が……あなたのおじいさんが、自分が死んだら遺産を全てあなたに譲るだなんて言うから……私たちは、両親を失ったあなたを大切に育ててきたじゃない……なのに、そんなのってひどい……あなたは知らなかったでしょうけれど、おじいさまの遺産は、私たちが死んだ後にあなたに譲られるっていうのよ……そんなのって不公平じゃない……だから、あなたさえ先に死んでしまえばって……思って、う、ううっ……」
「悪かった……すまなかった……本当に……許してくれ……」
 夫婦はぶつぶつと口の中で呟きながら、口の端に泡を浮かべながら、焦点の定まらない目を中空に向けた。エンデはそんな彼らを見て呆れたように肩をすくめ、それからパペットをしまった。
「刑事さん?」
「ああ、は、はい」
 私服姿の刑事が、慌ててエンデの元へ駆け寄る。
「これで二人の自供を取れますよ。あたしの役目はこれにて終了というわけです」
「…………! そうですか、それは……ご協力ありがとうございます」
 今までの展開に息を呑んでいたらしい刑事は、ようやく自分の役目を思い出したように動き出した。彼は制服姿の警官に、展開から取り残されてぼーっと突っ立っていた新堂と、暴走族のメンバーを連れ出させた。それから、スーツ姿の刑事と共に、夫婦を部屋から連れ出した。そうしてあっという間に誰もいなくなってしまった会議室を、私とエンデは後にしたのだった。