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欲望の果て

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次の日、朝からまた新次郎は専務室に呼び出され赤城より午後から時間を空けるように頼まれたので快諾した、専務室はいつもより慌ただしく取引先等の外部の訪問者で急がしそうに見えた、純一郎にもある程度察しはついていた自分が経営戦略室室長になる事により接待と言うグレーゾーンで癒着していた企業は赤城からその権力を剥ぎ取られるにより取引先の改選が行われるのではないかという不安感と焦燥・・大手の地位ある者程下品で厚かましいのは有名な事で売上よりわが身の保身が一番なのである、赤城の接待相手は赤城の言うがままの数字や情報の要求をのみ代わりに赤城は相手の欲し物を全て与えて来た、酒、女、はもちろんドラッグ、ゴルフ、旅行、高級車に不動産まで・・・。赤城の考え方は一個人の私腹など会社の大きな利益と比べれば安い物で使える人間はとことん利用した・・相手の欲望と引換に・・。もっとも赤城のこのやり方には社内でも批判する連中もいるが会社自身はやり方はどうにせよ急速に数字を拡大してくれるこの男に頼らざるを得なかった。
赤城にしてみれば無名の商社を国内外に知らしめる地位にまで伸ばしたのは自分だと自負していた。だから赤城は交渉相手等が不安リスクを伝えるとゆっくりとした口調で「俺は赤城一輝だ」と一言言って相手を押し込める事がしばしばあった。出入りするメンバーには高級官僚や大臣経験者までもおり赤城がいかに凄いネットワークを組んでいたが垣間見えた。純一郎は赤城がこれらのメンバーの引き継ぎを今夜説明するのだろうと思ったのだった。昼を過ぎた頃専務室秘書の宇佐美香織が純一郎の部屋を訪ねた、
「赤城専務よりこれを」と宇佐美香織は二つ折りのメモを純一郎に手渡した、メモにはマル秘のマークと都内のホテルのラウンジ名と時間が書いてあった、メモを見終わり宇佐美香織に「専務に分かったと伝えてくれと」と言うと宇佐美香織は「専務より伝言で、これより専務に内線も携帯もせずにメモの場所でお会い下さいと」言い終えると専務室に戻って行った。
純一郎は昼から外出でそのまま直帰すること
を室長秘書に伝えると足早に外出した。
メモに書いてあったホテルのラウンジに向かう為に。
タクシーを飛ばしてホテルに着くと、驚いた事にそこには既に宇佐美香織が待っていた。
「早かったですね芹沢室長」そう言うと宇佐美香織はホテル内の割烹の個室に純一郎を案内した。そこには赤城が座って待っていた。
「忙しいのにすまないな、夜は夜でまた楽しむんだがその前にお前に話しておきたい事があってな、少し遅い昼食だが大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですよ専務、それよりまたどうしてこんな所で・・」
「会社じゃ出来ない話だからな、あっ・・それと香織は気を使わなくても良い、俺と香織は夜のお楽しみ以外でも一心同体だからな」
このような赤城の言い回しは真面目なのかふざけた話なのか分からない時がある・・
「ええ、それは良いんですが会社で出来ない話とは」
そう純一郎が聞き返すと、赤城は珍しく真剣な表情で話し始めた。
「芹沢、五菱商事がここまで拡大してきたのは、社長が俺を自由にさせてくれたからだ、国内はもちろん北南米、豪州、欧州と俺の拡大戦略路線を全て承認し会社もそれについてきたからだ、それはお前もわかるだろう、次の市場としてはアジア・アフリカ戦略が必要になってくるのは必然でこれをやらなければ日本の商社なんて直ぐに諸外国の大手に飲まれてしまう・・・・」赤城の会社の将来の拡大理想論が数十分続いた・・結論としては水島社長が退いた後に五菱商事社長に自分は就きたいが親族である常務が社長を継ぐと同時に自分は潰され五菱商事の勢力も大いに減少すると言う嘆きでもあった、実際に営業戦略室の赤城よりの分離、アジア・アフリカ路線への足踏み・・今社内で起こっている事を考えてみても常務派の横槍があからさまにわかる。しかもそれは単に赤城個人への嫌がらせのような一面があり会社としての判断というより常務である水島直人の赤城潰しの一環であった、常務である水島直人はいつも赤城と比較され派手な成果を上げる赤城を水島はいつも疎ましく思っていた。赤城はこのようなつまらない社内の争いには興味が無く自分をCEOとして迎えてくれる華僑系外資商社の新興に移るというものだった・・その際に芹沢を専務に据え世界戦略を打ち立てたいというのが赤城の構想だった。もちろんその際に自分が築いてきた市場もろともひっさげてだ。純一郎は突然の事なので言葉に詰まったが同じ営業を担う物としては興味深い話だった。
「芹沢、五菱ではどこまでやっても稼ぎにも地位にも限界がある、俺はお前にそうはなって欲しくないお前ぐらいの能力があれば俺以上に数字も伸ばせて良い思いも出来る、自分で自分の評価を下せるんだ、今のようにどれだけやっても所詮はあのボンクラ常務が頭を
叩きやがる・・世界の同じクラスの報酬を見てみろ、俺たちが如何にちっぽけな報酬で満足させられているかが、芹沢俺と一緒に市場を全て掴みに行こう!」熱く語るに赤城に純一郎も少し胸を打たれよく考えてみれば会社の歯車となり五菱に貢献してきた割には自由の無さも感じていた。しかしこれと言って不満も無いのも事実だった。割烹での時間は過ぎホテルを出る頃にはすっかり辺りは暗くなっていた、赤城は宇佐美香織を帰らせると純一郎と2人でクラブ彩に向かった。
彩に着くと2人はボーイにいつものようにボックス席にとおされたが、テーブルには何もセットされる様子はなかった、しばらくすると智香が現れ赤城に目で合図するかのように軽く合わせると店の奥の分厚いカーテンの間に消えた、すると赤城は席を立ち純一郎に言った「行こう、芹沢付いてこい」赤城は智香の消えた方へ同じように向かった純一郎も薄暗い店内を赤城の後に付いていった
分厚いカーテンには切れ目がありそこをくぐるとエレベータの乗り口が現れた、既にエレベーターは空いており赤城について純一郎も乗りこんだ、エレベーターの大きくカーブした扉がしまり。エレベーターにはボタンが2つだけで上下のみであとは扉の開閉ボタンだけだった。純一郎が乗りこみ赤城はボタンを押したエレベーターは上に移動しているようだったエレベータの起動時間を考えるとかなり上昇してるのがわかった、高速エレベーターのせいかかなり早く動いているようだった。目的地に付くとエレベーターのドアが開き、短い廊下を抜けると身長の倍はある扉の前に出た。赤城はドアを軽くノックすると重い扉が内側に開かれた、開かれたドアの真ん中には智香と美沙が立ち2人を迎えた、赤城と純一郎が部屋に入ると扉は自動的にゆっくりと閉まった。純一郎は部屋の広さに驚かされた恐らくこのビルのフロア全面をこの部屋だけに使われているようだった、フロア全面に貼られた大理石、周囲にはギリシア風の彫刻を施した柱がたっており、天井からはいくつも大きなシャンデリアが吊るされていた、しかも室内にはジャグジーもありさながら高級ホテルのスイートルームのような場所もあるかと思えば、少し奥を見ると植物園のように植物が茂り大きな岩の間から滝のように水が流れこれが室内であるかを錯覚させるような空間でもあった。
作品名:欲望の果て 作家名:松下靖