小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

欲望の果て

INDEX|6ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

内心純一郎はラッキーと思ったが社交事例として言葉を発しておいた
「えっ・・それは残念ですまたどうして?」
「新次郎の受験の親子面接の練習しなきゃならないでしょ、お母さんがいたら新次郎が岡さんに甘えて真剣な面接の練習が出来ないから」リビングで話している純一郎と涼子の母親の会話に割り込むように涼子が入ってきて言った。
「そういうことですから・・純一郎さんまた次回ゆっくりとお話聞かせてね」
「そうですね、じゃあまた次回に・・」
涼子の母親が帰ると早速涼子はお受験の面接のシュミレーションを始めた
「さあ、新次郎パパとママと三人の面接の練習よ、パパが居ない時も練習してた成果をパパに見せてあげなさい」
そう言うとリビングの50インチの液晶テレビの前に食卓の椅子を3脚並べて新次郎を挟むように涼子と純一郎が座り画面にはお受験の面接シュミレーションD?Dが流れ始めた。
D?Dを使ったこの面接練習が涼子の猛特訓の下純一郎、新次郎はとことん行われた。気が付けば夕食の時間はとっくに過ぎて時間は夜9時を回っていたファミレスに行くには少し遅い気もしたのでとりあえずデリバリーでピザを注文し夕食を済ませた。
久々に純一郎は新次郎と風呂に一緒に入り会話をした
「パパ、ヨーロッパ人と日本人はどっちが偉いの?」
「ん〜〜新次郎ヨーロッパ人ってのはいないんだよ、フランス人とかドイツ人とかの国があってその近くの国々をまとめてヨーロッパっていうんだよ」
「それにどの国の人が日本人より偉いとかそんなのはないんだよ」
そんな会話を数分して純一郎は素朴に新次郎に聞いてみた
「新次郎は大きくなったら何になりたい?」
すると新次郎から即答で
「プロ野球選手!!」と帰って来た
以外にも純一郎が子供に将来の夢を聞いたのはこれが初めてだった・・というのも先程のお受験の面接練習をしながら純一郎はお受験というものに疑問を抱いていたからであった、もちろんお受験を新次郎自信が望んでやりたがっているなら賛成だが親の希望と夢を押しつけるのは純一郎的には好きではなかったからである。
「そうか、プロ野球選手か!じゃあリトルリーグとか入りたいか?」そう問いかけると新次郎は眼を丸くして純一郎に食いついた、
「パパ!野球やっていいの?ママは駄目だって言うんだ良い大学に入ってから野球しなさいって」
大学入ってから野球?純一郎は内心そんなの手遅れだと思っていたがここで涼子の言った事を直ぐに否定すると後でややこしくなりそうだったのであえてその後は野球の話はそらした。
新次郎を寝かせてから純一郎は寝室に移動して涼子より先にベッドに入った、涼子が風呂に入っている間時間があったので何気に携帯のメールを美沙宛に始めた。
時間的に店の時間だと思ったので
「昨日は楽しい時間をありがとう、また寄らせてもらいます、今日も笑顔で頑張って下さい。」
携帯を置き布団にもぐりこむと以外にも直ぐに携帯のバイブレーションが震えた。美沙からの返信だった。
「メールありがとうございます、今日は体調崩してお店を早くあがらせてもらって家で休ませてもらっています」
意外な返信に純一郎はちょっと驚きつつ、また愛おしく、心配にもなった。
「大丈夫?熱は無いかい?何かいる?」
「熱は無いですが頭痛が酷くて・・こんなときは都会の一人は不安ですね」
「今から行こうか?」行こうか言う表現よりむしろ純一郎は行きたいと言う方が本音かもしれない
「駄目ですよ!乙女の一人住まいに夜這いをかけちゃ、お店でまたお会いしましょう、お気遣いありがとうございます」
「じゃあ、明日元気なって店に出ているなら必ず行きます、今日はゆっくり休んで下さい」
純一郎がメールを打ち終えるのと同時ぐらいに涼子が寝室に入って来たので何後も無かったかのように純一郎は携帯を充電器に乗せた。
「充電器反対よ、それじゃ充電できないわよ」 涼子は単に気づいたので言ったまでだったが少し動揺し慌てた純一郎は置き直すつもりがベッドのヘッド部分から床下へ落としてしまった
「何一人でバタバタしているのよ」そう言うと涼子は純一郎の携帯を拾い上げて充電器に据えた。涼子に電話を拾われて手中にある間に美沙からの返信が来ないかと純一郎はヒヤヒヤしていたがそんな心配は無用であったかもしれない。涼子もベッドに入ると純一郎が切りだした
「新次郎は野球がしたいって言っていたぞ、まだ子供何だし好きな事やらせてやれば良いんじゃないか?」
「純ちゃんも新次郎に興味あったんだ・・」「当たり前じゃないか父親なんだから」
「だって純ちゃんは新次郎生まれた時も仕事で居なかったし、誕生日も1歳の時にしてから居なかったし、クリスマスもプレゼントはずっと私が買って用意してきたし・・運動会の日は大抵ゴルフだったし・・そりゃ仕事が忙しいのは分かるし他の同世代よりゆとりのある生活も出来るのは純ちゃんの仕事のお陰だってわかるから何も私は責めないけど・・もっと新次郎に興味を持ってくれるのかと思ってたから・・何年ぶりかな純ちゃんから新次郎の話が出るのは・・」
そう言った涼子の言葉で純一郎はよくよく考えてみると新次郎の事を何も知らなさ過ぎた出張や海外赴任も多く実質母子家庭で来たような芹沢家では子育ては全て涼子が行っていたので純一郎自身も小さい時に父親にあれこれしてもらった思い出も無く父親なんて結構無口で子供が相談してくれば答えれば良いと思っており近年の父親のように学校の行事には率先して参加し下手をすれば有給休暇をとってまで参観日に出席したり運動会や学芸会ではハンディのビデオカメラを片手に戦場に行くような様相でわが子をカメラに収めんと最前列を確保する為に人込みをかき分けて必死にベストポジションで撮影している父親が多い中、純一郎は殆ど関知していなかった。興味が無いというわけではないが自分の中での父親の像を描くなら今の自分しか出て来ないから仕方が無い。
「急に新次郎の事を言い出したと思ったら野球か〜」涼子はため息をつくようにいった
「野球したいんだからやらしてやったら」
「野球やっても将来野球で食べていけるわけじゃないし、週末の練習は夫婦そろってチームの世話役しなきゃならないし・・どっちにしろ無理でしょ・・現実を見なきゃ」
それに今更夫婦での行動ってのも・・涼子は結婚して以来の純一郎の仕事一辺倒の生活と母子家庭的な新次郎との関係を変える事に対して嫌悪感があった、どちらかと言えばお受験の面接が済めばまた単身で何処かへ赴任してもらう方が自分の生活リズムが崩れなくて済むとも考えているほどだった。しかし純一郎は涼子との仲がこれほど冷めて距離があるとは夢にも思わず、欧州の赴任と本社付けの営業戦略室長になった事を家族一同喜んでいるものとばかり思っていた。
「新次郎の事は私に任せて」最後に一言涼子は純一郎に言うと電気を消してさっと寝てしまった。純一郎は腑に落ちなかったが寝る前にあまり涼子と口論は避けたかったので自分もそのまま寝る事にした・・明日美沙に会えるかどうかを思い巡らせながら・・・
作品名:欲望の果て 作家名:松下靖