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欲望の果て

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「少し予定と違っているけど前には進みそうよ向こうはこちらの事は気付いてないわよ、ええきっと上手くいくわ、大丈夫私が受取人で2億の保険金もかけてるくらいよ、全く疑ってないわ」
電話の相手はくるくるとドライバーの形のストラップを回しながら言った
「本当に大丈夫なのかい?」
「例え本当の事が分かっても偶然の事故で逃げる事が出来るわ、切れない糸なんて無いんだから・・・」
「怖い女だね君は・・」
「あら、その怖い女を落した貴方はもっと怖い男でしょ、大体この青木ケ原樹海の事を彼に話したのは貴方なんでしょう・・」
青木ヶ原樹海は溶岩の上に出来た磁鉄鉱を多く含み、方位磁針に若干の狂いを出させ迷ってしまうと言われているが俗に言われるように「方位が分からなくなるほど大きく狂うものではない」また派生形として樹海の中ではデジタル時計が使えなくなるとか車の機器や放送機器に異常をきたすとも言われるが科学的な根拠に乏しく都市伝説的なモノと言っていいかもしれない、GPSが使えないと言う話もあるがこれは電磁波の影響よりも密生した樹木に電波が遮られる為であり磁鉱石とは無関係である、また軍用等の高度なモノは密林であっても正確に機能するのである。青木ヶ原の樹海で迷うというのはむしろうっそうと茂る密林に太陽が遮られ少し足を踏み入れると周りが同じ景色に見えて方向感覚を失い果てて行くからである。
「そこに追い込む流れを作ったのは電話の先の魔女ではございませんか?」
「言ったわね・・次会った時に覚えてなさい魔女のお仕置きをたっぷり味あわせるわよ」
そう言うと美沙は電話を切り煙草に火を付けてつぶやいた
「早く動きなさいよ・・・」
一方和彦も合流した保養所では和彦が持ってきた材料でバーベキューの準備がガーデンで始まっていた
「悪いな和彦、こんな用意までさせちゃって、本当なら俺達が準備しなきゃならなにのに」
「良いんだよ、純一郎涼子ちゃんとお前を驚かせようと思って準備していたんだ、何かまた偉くなったって聞いたからお祝いがてらね」
「偉い前と大して変わらないよ」バーベキューの準備をしながら二人は談笑していた、
「純一郎、ライターか火を付けるモノは無いかい?」
「ああ、キッチンにあるんじゃないかな?とってこようか?」
「良いよ、他のモノの取りに行くから俺が行くよ」そう言うと和彦はキッチンに向かった
和彦がいてはそうそう簡単には下手な動きは出来ないと思いながら純一郎は和彦を帰らせるか涼子と同じように眠らせる必要が出て来た・・純一郎は少し考えて単純にアルコールで攻める事にした、学生時代の経験から言うとアルコールでは和彦に余裕で勝つことは出来る事は実証済みでたった、そう考えた純一郎はキッチンの冷蔵庫のビールをとりに行く事にした、純一郎がキッチンに向かうと既に和彦と涼子が何かは小声で話しているようだった、キッチンの角の壁に思わず純一郎は身を潜めた
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、医者の僕が言うんだから間違いないよ、この薬は飲むと30分で深い眠りに落ちるから・・気付かないよ」
「ホントにそれで純ちゃん起きない?」
「ああ、薬が効いている12時間は完全に寝ているから目が覚める事はないよ・・」
そう言うと和彦は涼子の背後から抱きしめた
「私待てない・・」
「焦らないで、もう少しの我慢だよ」
垣間見ていた純一郎は内心やはりそうだったかと思いながらいっそのこと二人とも葬りたい気もしてきた・・そして思ったもしかしてあの二人は眠らせて俺を殺す気なのかと・・
眠らせて殺す・・相手も同じ事を考えていたとは・・・でも俺は運が良い相手の手の内を先に知る事が出来た・・むしろこっちの方が有利だ、とりあえずビールで和彦を潰してそれから予定通りに涼子を・・そう思った純一郎は不自然なまでの笑顔でキッチンに入った
不意をつかれたように涼子と和彦は離れた、「和彦、表でビール飲もう、今から火を使うから暑くなるしな」
「い、いい、いいねー俺も直ぐ行くよ」和彦は焦って言葉が浮いていた
先程の不自然さを打ち消そうと和彦は少々ハイペースでビールを飲んだので純一郎の思惑通りアルコールに弱い和彦は陥落してしまった、涼子の出す飲み物には警戒しひたすらビールだけを飲んでいた純一郎だったが予定どおりに涼子に睡眠導入剤入りの飲料を飲ませて眠らせる事に成功した!純一郎はさらにアルコールで弱っている和彦にもそれを薦めて飲ませる事に成功した、これで元の計画どおりに移せる・・純一郎は程なく美沙に連絡し当初のように樹海周辺の道路から脇道に入り車で行ける所まで奥に進んだ、辺りは日が夕暮れの景色に変わろうとしていた、樹海の入り口に車を止めると間もなく美沙の車が後ろに付いた
「じゃあ行ってくるよ、美沙」
「ええ、待ってるわ足元に気を付けてね」
そう言うと純一郎はトランクから釣り糸を繋いだドラムの先をベルトに通すと完全に眠りに落ちた涼子を背負って樹海の奥へと足を進めた・・少し足を踏み入れると辺りは太陽を閉ざされたかのように薄暗かった・・切り開かれていない野道を行くのは非常に体力と気力がいる、先程和彦を落す為に飲み過ぎたビールも祟ってか非常につらい行軍となった、さすがに樹海らしく自殺者のモノだろうか荒れて朽ち果てた衣類やリュックが途中転がっていた・・さらに進むと木の幹に呪いの人形であろうか人形に模したものが釘で打ちつけられていた・・何処となもなく鳥の鳴く声、聞いた事も無い生き物の声なのか音なのか・・薄気味悪い密林を純一郎はひたすら進んだ、しばらく行くと今度は革靴が無造作に転がっていた甲の部分が敗れ虫達が巣食っていた、ふと見ると自殺者の後なのか幹にロープが釣り下がっていたその先はもちろん輪になっていた純一郎は背筋が寒くなり思わず背負っていた涼子を落してしまった・・1時間は歩いて来たであろうか純一郎は一休みする事にした睡眠導入剤を考えればまだまだ涼子は起きないはずなのでここで手をかける必要性もなくしばらく純一郎はそこにへたり込んだ背負っている間に衣服が肌蹴て完全に寝ている涼子を見て純一郎は最後に自分に体を許さなかった涼子を襲うかとも考えたが悲しいかな体が動かなかった・・・ベルトに通した釣り糸を2,3度引いてみた、どのくらい進んだのか見当もつかなかったが糸の先に美沙が待っていてくれていると思えば少しでも早く事を進めたかった、再び純一郎は涼子を背負って樹海の中を進み始めた、
一方樹海の入り口で車を止めていた美沙はトランクからスルスルと出て行く糸の長さを見ていた、携帯を手にとると先に掛って来た番号にリダイアルをした・・・
「やっと順調に進んだわ・・・」
「そうか今どれくらい2kmは越えたと思うわ、そろそろ良いんじゃないかと思うから東京には2時間ほどで戻れると思うわ」
「わかった、シャンパンの準備でもしておこうかな」
「シャンパンよりも貴方の方が先よ」
「お手柔らかに・・・」
そう言って電話を切ると美沙は煙草に火を付けた・・そしてそのライターの火であろうことかトランクから純一郎に延びている釣り糸に火を近づけ切ってしまった・・・。
作品名:欲望の果て 作家名:松下靖