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詩の批評

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 物語というものは個人の中で確立した認知の枠組みであり、言説は物語という形式をとることで聞き手や読み手によく理解される。物語的であることは、有意義な情報を伝達する際の一種の規範として作用していて、それゆえ物語性のない言説を前にすると、人間はその規範からの逸脱を既存の認知枠組みの中に回収できず、そこに謎を見出す。廿楽の詩や他の多くの現代詩は、その物語性からの逸脱によって、聞き手や読み手の既成の認知枠組みからはみ出ることで美感を生み出そうとする。
 さて、そのような謎の投げかけがなされる場において、一体何が起こっているのか。物語を行為としてとらえる以上、そこには行為の主体と行為の受け手が想定される。行為の内容、すなわち詩のテクストに物語がない以上、人間の物語への欲求は、テクストの外側に物語を求めようとする。すると、そこには、書き手のたどる書かれざる物語、読み手のたどる書かれざる物語、があることが分かってくる。すなわち、書き手は、時系列に従って、自らを単一のテーマ(書く主体)とし、詩を書き始め、詩を書くことで何らかの変化をし、出来上がった詩を自分なりに評価する。読み手は、時系列にしたがって、自らを単一のテーマ(読む主体)とし、詩を読み始め、詩を読むことで何らかの変化をこうむり、その読詩体験を自分なりに評価する。特に、引用部における謎の投げかけは、読者に感銘を与えることで読者に情緒的な物語をたどらせることができる。そして、読者は今度は書き手として批評を書くという新たな物語を始めるかもしれない。ここには、作者の物語―書かれた半物語―読者の物語という三重構造がある。

4.おわりに

 廿楽の詩の、「物語」という規範からの逸脱は、他の多くの現代詩も行っていることである。私は多くの現代詩の行っている規範逸脱のひとつの例証として、廿楽の作品、特に引用部について詳しく分析した。それゆえ、廿楽の詩の特殊性について十分語れたとはいいがたいが、そのような反批評的な批評は、むしろ広い適用可能性を持つことによって、詩を批評する、あるいは批評しようとしている人間にとって有益であると考える。


作品名:詩の批評 作家名:Beamte