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 扉の向こうから現れた頭頂部を禿げ散らかした中年のおっさんに、リュスは淡々と要件と告げる。おっさんは、
「おお! そうか。ありがたい! 俺が受取人のフォスターだ。とにかく中へ入ってくれ」
 やたら嬉しそうな顔をして俺たちを部屋の中へ招き入れた。俺たちが中へ入ると、フォスターさんは扉に鍵をかける。
「依頼された届け物だ」
 俺たちはリュックを下ろして、鍵をかけ終えたフォスターさんに渡した。フォスターさんは中身を確認すると、
「確かに受け取った。間違いなく頼んだ品だ」
「よし! じゃあ約束通り報酬をくれるんだよな?」
「もちろんだ。ちょっと待て。今わた――」
 バ―――――ンっ!
 背後ででっかい音がした。振り返ると鍵をかけた扉が吹っ飛んで、あの黒服のお兄さんたちがどたどたと入ってくるところだった。こんなところにまで追いかけてきやがったのかあいつら!?
「やはりあの荷物はお前宛の物だったんだな。おい、フォスター! 一体何をたくらんでいる!」
 先頭に立っマフィアのお兄さんが開口一番そう詰問する。しかし、
「お前らに教えてやる義理はない! これはボスが考えられた計画だ! メイヤードの奴らに邪魔されてたまるか! 野郎ども、出てこい!」
 フォスターさんは負けじと言いかえし、なぜか物陰に隠れていた部下たちを招集する。間に挟まれた俺たちは逃げるタイミングを逸して、仕方なくフォスターさんの後ろに下がる。
「お、おい! いったいなんなんだよこれは!」
「お前ら、ここがローネブルグの縄張りと知ってなおケンカを売るつもりか!?」
「俺たちは何としてでもお前たちの計画を調べるようボスに厳命を下されている! 可能ならば計画を阻止するようにともな!」
「我々とてボスに計画を一任されている身だ! メイヤードごときにボスの計画は邪魔させんぞ!」
「完全に無視されてるな・・・・・」
 というか、存在を忘れられている気がする。ちょっと待ておまえら。俺たち一般人を巻き込むな。
「ふん。お互いボスの命で動いているということか。ということは簡単にはひかないということだな」
 にやりと不敵な笑みを浮かべるメイヤードのリーダー的存在のお兄さん。なんか雲行きが怪しくなってきたぞ・・・・
「もちろんだ。そちらもそうだというなら、実力で勝負をつけるしかないようだな」
「望むところだ。メイヤードの力を見るがいい」
「なにを。我らローネブルグの技術を見せてやる」
「「かかれ!」」
 どどばばどばどばばばばばば!
「だあああああああああああ!」
「やっぱりそうなるのかくそっ!」
 メイヤードとローネブルグとかいう二つのマフィアが撃ち合いを始めたので、俺たちは弾丸を避けて物陰に避難。そろぉっと顔を出して除くと、狭い室内での激しい射撃の応酬に、すでに何人かが倒れている。唖然としながら見ていると、フォスターさんが弾丸を避け、俺たちのいる物陰に滑り込んだ。
「ちっ、奴らなかなか強力な銃を持っているな・・・・」
「強力な銃!? まじかよ! あああああああ全く麻薬の運搬なんて引き受けるんじゃなかった!」
「は? おまえ何を言ってるんだ」
「だから! これ麻薬だろ! 危ない白い粉だろ!」
 俺はキレ気味で主張した。自業自得とかそんな言葉が飛んできそうだが知ったことじゃない。なんせ銃撃戦に巻き込まれたのだ。冷静でいろと言うのが無理な話である。しかしフォスターさんは、ああと気の抜けた言葉を吐いて、リュックの中の白い粉を指さした。
「ヤクなんかじゃないない。これ、花火の材料」
「「・・・・・・はい?」」
 俺とリュスの声がきれいにハモった。今のなに? 空耳? 空耳的なサムシング? ほら、マフィアのお兄さんたちがドンパチやっててうるさいし、きっと聞き間違えたに違いない。
「うおおおおお! ボスの計画を邪魔されてたまるものかー!」
「そうだそうだ! 十万発分の花火を用意した俺たちの苦労をなんだと思っている!」
「なにをいう! 俺たちなんかなぁ! ボスが式場を花でいっぱいにするとか言い出したから、花屋を回って買い占めたんだぞ! ボスって意外と少女趣味なんだなって思った!」
「おいお前! こっちの計画をバラしてどうする!」
「あ、やべ。つい・・・」
「ふははは! 自ら墓穴を掘るとはバカな奴め!」
「お前も花火十万発計画バラしてるじゃん!」
 わあなんかよく分からんけど掛け合いがカオス。花でいっぱいとか花火十万発とかよく分からん単語が聞こえるぞ。しかもよく見たらマフィアのお兄さんたちがぶっ放しているのはペイント弾。当たったら痛いけど死にゃしない。
「なんの戦いだこれは・・・」
 あきれ返ったリュスがやれやれという風にため息をつく。ちなみにペイント弾の雨を逃れるため、俺たちは物陰に隠れた状態を継続中。とっとと報酬もらって家に帰りたいのだが、これでは出るに出られない。どーしよーかと思っていると、突然、ひときわでかい銃声が鳴り響いた。
 どどどどどばばばばばばばん!
「どわわ!」
 室内に銃声が鳴り響いた。かなり大きな音に、抗争を繰り広げていたマフィアのお兄さんたちが静かになる。ついに実弾を持ち出したかやべぇ! と思っていたら、続いて聞こえてきたのはこの場に似合わぬかわいらしい声だった。
「はーいそこまで。それ以上ケンカするのはやめてね☆」
 全員の視線が声の主――アサルトライフルを手にした超絶美人(かなりのボイン♪)のお嬢さんに向く。その途端、フォスターさん以下マフィアの方々が一斉に御嬢さんに向かって頭を下げた。
「「「「姉御! どうしてこちらへ!?」」」」
 姉御!? あんなかわいらしい子を姉御って呼んじゃうの!? 俺は心の中で目いっぱい突っ込みを入れる。
「メイヤードの皆さんがここに来てるって話を聞いたから、ひょっとしたらケンカになってるんじゃないかと思って。でもわたし言ったよね? これからはケンカしないで仲良くしてって」
「い、いやそれは分かっているんですが、先にケンカを売ってきたのは向こうの方で・・・」
「でも話し合いで解決できることもあるでしょう? ケンカを売られたからって暴力で反撃するのはよくないわ。それにメイヤードの人達とは仲良くしてくれないと困るわ。ケンカになって怪我でもしたら、わたし悲しいもの・・・・」
「「「「姉御ぉぉぉぉ! すいまっせんでしたぁぁぁぁ!」」」」
 フォスターさん以下一斉に土下座するお兄さんたち。いかついお兄さんたちがかわいいお嬢さんに頭を上げている図は何とも言えない光景だ。
 しかし、頭を下げていない人たちもいた。メイヤードの皆さんである。
「おい! ぼさっとしてないでお前らも姉御に謝れ!」
「ふん。いくらエレナ様とはいえ、俺たちが従う義理はないね」
 メイヤード側のリーダーっぽい男が偉そうな態度で言う。ほう。あのお嬢さんはエレナという名前なのか。かわいい・・・・ってそんなことはどうでもよかった。ともかく、リーダーっぽい男以下メイヤードの皆さんはエレナに従う気など全くないようだ。しかし、
「何を言ってるのかなジャック君?」
作品名:運ぶのもと言えば 作家名:紫苑