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十六夜 ほたる
十六夜 ほたる
novelistID. 45711
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もうすぐクリスマスですね

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 そして、翌日。クリスマス当日の日、茜は約束通り朝早くにつばめの家に出向き、どこかワクワクとした顔でつばめのコーディネイトを始めた。


 場面は変わり、当日を迎えた奏多はというと……。
「……」
 女の子向けのジュエリーッショップのショーウィンドウに並べられている様々なアクセサリーとにらめっこをしていた。ちなみにその時間約一時間弱。何故こんなに悩んでいるのかというと……――。
女の子にプレゼントって何を買えばいいんですか?
 わからない、わからないわからない。そもそも口下手な自分が今まで生きてきた人生の中で女の子にプレゼントなんてしたことがあるわけがない。むしろあったらそれは奇跡に近いだろう。でもせっかく千弦が出してくれたアドバイス……無下にするわけにもいかない。
 どうしたらいいんだ!
 ずーんと背後に重たい空気を背負いながらショーウィンドウを見詰める奏多。他人から見ればショーウィンドウを睨みつけている目つきの悪い青年だ。
 中に入るしかない、よな。でも……――。
 手段はひとつしかないとわかっている。プレゼントを買うためには、この女の子しか入らない店に男一人で乗り込む……いや、入るしかないのだ。
 男は度胸。そう思えばぐっと手を握りしめ、一歩足を踏み出そうとしたその時……。
「あれ、妃?」
 どきっと高鳴る心臓。聞こえてきたのは高すぎず低すぎず…ちょうどいいアルトボイス。その声は不思議そうな、少し怪しむような気配を滲ませている。
「あ、愛智」
 おそるおそると振り向けば、声音と同じように不思議そうな顔をしてこちらを伺っている同級生である女性――名を愛智胡桃――がいた。
 綺麗に染められた巻かれた金茶の髪を肩から下に流し、大学で見ているナチュラルメイクよりばっちりと決められたメイクが大人っぽい雰囲気をいつもより出している。これからどこかに出掛けるのだろうか。
「どうしたの、そんな所で……睨みつけるように店の中なんて見て。中の人達怪しんでるよ?」
「え? おお……本当だ」
 胡桃が人差し指でショーウィンドウの向こう側を指さす。気が付いたように見てみると、彼女の言うとおり、こちらを訝しげな目で見る店内のお客さんと店員さん。
 ……目があった。すぐさま逸らされてしまったが。
 しょうがないというように大きな溜息をついて前髪をくしゃりと片手であげる。少し心配そうにこちらを見ている胡桃に気が付いて、少し口角を上げぎこちないが微笑みを作れば、口を開いた。
「あー……別になんでもない」
 さすがにバイト先の女の子にプレゼントを、なんて同級生に話すのは恥ずかしいという気持ちにかられたのか奏多は言葉を濁すだけになった。
「ふぅん……。なら、今時間空いてるんだよね? 私と今からお出掛けしようよ」
「は……? いや、俺夜から用事あるし」
「夜にでしょ? 今は空いてるんだからいいじゃない、付き合いなさい」
「や、でも俺……!」
「ほら、まずはこのお店に入ろ。私新しいアクセ欲しかったんだー」
「聞いてくれ、俺の話」
己の腕に絡みつくほっそりとした線の細い女性の腕が、何故か自分を引きづるほどの力があると初めて知ったのだった。