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十六夜 ほたる
十六夜 ほたる
novelistID. 45711
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もうすぐクリスマスですね

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 フロアに戻ると、どこか満足げにすっきりとした顔をしている千弦がつばめに気が付き手を振った。
「つばめ、もう大丈夫なの?」
「あ、うん。大丈夫だよ。ごめんなさい、いきなり……」
「んーん、大丈夫よ。気にしないの。それよりね、奏多がつばめに話したいことがあるんですって」
「妃さんが、私に?」
 うふふ、と右手を頬に添えて笑う女性らしい仕草で千弦は頷き肯定した。女の自分よりその仕草が似合うと思うのは、きっと千弦が女性のように綺麗に整った顔をしているからなのだとつばめは自分に言い聞かせた。でないと、女である自分に自信が持てなくなってしまうからだ。
 ぎゅっと鞄の持ち手を握りしめ、一生懸命自分に言い聞かせているつばめをよそに、千弦は千弦で奏多に肘鉄を食らわせ、早く言えと急かしていた。千弦が何故、こんなにも急かしているのかというと、それは少し前に話が戻る。
 
真がクリスマスは店をやらないと言ったあの後、奏多はつばめが来る数分前千弦にこう言われたのだ。
「予定内ならつばめ誘ってイルミネーションでも見てきなさい」と。
 一瞬この幼馴染は何を言っているんだと奏多は思った。
 え、ほんとなに、俺がコミュ障と知ってるのにそれを言ってるのかお前は。
 悪魔か?鬼なのか?それを言えたら苦労なんてしないんだ。
 心の中ではいくらでも毒が吐ける。これを実際現実でも言えればいいのだが、今回はそれを言い出せない。何故なら、千弦の背後に見える禍々しい黒いオーラが反抗の余地を与えてくれないからだ。
 隣で煙草を吸う真に、助けてくれと念じながら視線を投げるが、知らぬ存ぜぬで奏多と目を合わせようともしない。
 助けてくれる気まったくない!
 奏多は半分諦めモードに入るも、ひとつだけ疑問を聞いた。
「なんでイルミネーションなんだよ」
 そう聞くと千弦は知らないの?と首を傾げては口を開いた。
「今回のイルミネーションは凄いらしいのよ。決まった時間に決まったイルミネーションショーをやるらしくてね。その中で、デートの目玉になってるショーがあるんだって。それを見てさっさと告白してらっしゃい」
 女と間違えそうになるくらい綺麗な笑顔で今年最大の難関をぶつけてきたのだった。