LCACがやってくる
こうしてLCAC問題は私たちの予想を超えてにわかに政治問題化した。町は二分された。
私たちの請願が可決される可能性が浮上した。何しろ、特別委員会の委員長も議会議長も反町長派なのだ。
特別委員会の構成を考えると、中間派の一人が請願の採択に回れば(つまりLCAC反対に回れば)四対四となり、委員長の一票で採択される。これまで基地の視察や関係者からの聞き取りをしてきた特別委員会も、請願そのものについて議論するようになった。その場である町長派議員は請願に反対する理由として、「この請願は紹介議員が共産党町議である。どこでも共産党からの請願は否決するのが習わしで、もし可決したら全国のわらいものになる。」と述べたという。
私にはちょっと複雑な想いがあった。私も現町長の誕生を心から喜び、後援会にも入会した一人だった。実は最初の選挙の時の政策立案にも一度参加した。町長が今も使っている「お年寄りが安心して暮らせる町、若者が戻ってくる町、子ども達がのびのび育つ町」というキャッチフレーズは私の提案したものだ。
現町長になって利権政治はかなりの程度改善された。現在の反町長派は前町長時代に甘い汁を吸っていた連中が中心になっている。だから議会でも彼らは町長に対する嫌がらせばかりしてきたのだ。現に彼らはLCACに反対してこなかったじゃないか。今さら「住民の立場に立つ」と言われてもねえ。
でも、利権や人事で不毛の対立をしているより、実際に町の将来にかかわることで対立してもらう方がずっとましだ。金をばらまいて選挙に勝とうとするより住民の意思に応えて選挙に勝とうとする方が「正しい」。まあ、本質的に住民運動は課題ごとに戦うもので、過去やイデオロギーは問わないのだし、いいか。
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ