LCACがやってくる
十一月には議長はマスコミのインタビューに答えて、「十二月議会で請願に対する結論を出す」と語った。町長派は最初、この時期の結論はまずいと再度の引き延ばしを考えたようだが、おそらく上の方からの「結論を出せ」との指示があったのだろうが、十二月の決着に応じた。
私の回りはあわただしくなって仕事にもさしつかえた。マスコミは殺到して、特にNBCテレビはのちに「町の選択ー基地受け入れの構図」という題で放送される特集番組のために私の農作業の様子なども含め何度も何時間にもわたって撮影していた。
私は「反対する会」を招集した。各人の情報は錯綜し、結論は「見通し不明、若干不利」というものだった。議会直前に発行予定のチラシの内容についても延々と議論がつづいた。だれもがこのチラシの重要性を痛感しているのだ。
反町長派からは「大丈夫、安心してくれ」という情報が入った。私は特別委員会開催の前日に届くように全議員に手紙を出した。ほとんど使ったことのない丁寧な言葉で「見返り」についても説明し、「結局、戦争に協力して町を良くしようと言う考え方には無理があるのではないでしょうか。」と結んだ。でもたぶんだめだろうな、と私はひそかに思っていた。
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ