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つだみつぐ
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LCACがやってくる

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 「反対する会」の発足の時もそうだ。7〜8人の住民が公民館の和室で話をしている、それを20人以上のマスコミが取材するのだ。このギャップに私はずっと悩み続けた。このことはあとでまた述べたいと思う。
 私が呼びかけた人達はほとんど来なかった。会議は仲間内的な気安さでいきなり戦略会議になった。
 一番のテーマは「住民投票を要求するか」であった。この場合には、会の名前も「LCAC問題を考える会」にすべきだ。そして「LCAC基地建設に関する住民投票」を要求する署名を集めて議会で住民投票条例を制定して、という段取りになる。それが本筋かもしれないし、話題性もある。戦いやすい。
 でも、この町で住民投票が本当に実施されるまでになるのだろうか。住民の代表である議会を信用しないのか、といったくだらない議論に埋没してLCACの危険性の話がどっかに行ってしまわないか。最初から「反対する会」として「嫌なものは嫌なのだ」と言い続ける、そしたらまた別の人達が「それなら住民投票で」と言い出すかもしれない。
 でもそれじゃ、「LCACについてよく考えてみよう」という人を会から排除することにならないか。
いや、そんなことはない、などといった風な議論の結果、住民投票ではなく、「LCAC基地建設に反対する請願」の署名を集める方に決定した。
 私は今でも、どっちが良かったのか結論が出せないでいる。

 1999年の3月議会まで、2ヶ月半あった。再度全戸に新聞折り込みでチラシを入れてから、私はいやいやながら隣の家から順番に回り始めた。
 私は署名集めがものすごくいやなのだ。署名を求められるとこの町の人達はほとんど内容の如何にかかわらず、署名を集めに来た人と自分との関係、相手の社会的地位、世話になった度合いなどで判断する。そしていわば相手に「貸し」を作るような気分で署名するのだ。だから私は「はいはい」と署名しようとする人に対して待ったをかけるように、どのような署名であるかを詳しく説明し、違う考えを持っているなら署名しなくて良いのだ、と言うことさえあった。ばかみたいだ。