LCACがやってくる
その後、私は落ち込むこと以外何もしなかった。「反対する会」を招集し運動の総括をすることさえも。でも、共産党系や社民党系の集会に招かれたときは、つらかったけれど出かけていってLCACの話をした。この町で起こったこととそこから学んだことを運動を続けている人々に伝えること、それが私の最後の最低限の義務のような気がしたから。
集会で私は私の話をこんな風に結んだ。
「最新鋭の揚陸艇であるLCACは世界の海岸の70%から上陸可能であるといいます。それは世界の海岸の70%をいつでも戦場にすることができるということです。
LCACの上陸するその海岸には人は住んでいないのでしょうか。子供たちが裸になって小さなさかなを捕まえたり、きれいな貝を拾ったりしていないのでしょうか。
戦争があるから軍隊が必要なのだといいます。そのために基地が必要なのだといいます。本当なんでしょうか。本当は軍隊があるから戦争が必要なのではないでしょうか。だって、あの人たちは毎日毎日人殺しと破壊の練習しかしていないのですから。
世界中の町や村が軍事基地を拒否すれば、誰も戦争ができません。それぞれが自分の地域を守ることが世界中でこれから先の人殺しを防ぐことにつながります。
私は私の地域が軍事基地になることを止めることができませんでした。そのことを私は世界中の人たちに対して本当にもうしわけなく思います。」
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ