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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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LCACがやってくる

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 最後に、「町づくり」について述べさせて欲しい。(私のもともとの関心事でもある。)
 私の部落でも、小さな事を決めるのに、時にはいらいらするほど長い時間をかけて話し合う。農民や漁民が減って勤め人が増えたので出席者は激減しているが、みんなが納得するまで話し合い、この部落を良くするのにみんなが参加して欲しいという願いが明らかにある。でも、一方で「お上」には呆れるほど弱いのだ。(部落の「寄り」にはもう一つ欠点がある。「一戸から一人」と決められている関係で、実際には「じいちゃん」ばかりが出席することだ。だから女性や若者の意見はほとんど反映されない。このことと「お上に弱い」こととは関連があると思うが、ここではこれ以上触れない。)
 その結果、本来お互いが一人一人を尊重する部落の「共同性」が時には上からの管理を貫徹する便利な道具になる場合があるのだ。だったら、逆にその「共同性」を強靱な武器として誰からも支配されない自立した地域を作るにはどうしたらいいのか。
 そのことについて私はとりあえず、この「共同性」を「開かれた共同性」に組み替えていく必要がある、と考えている。隣の部落に、隣の町に、そして世界に。(ついでに言えば、共同性を失った砂のような個人の作る社会に私は何の期待も持てない。)
 今回の私たちの敗北はこの町の住民運動に深い傷を残すだろう。というより、もう誰も少しでも「政治的」な課題には取り組まなくなるかもしれない。
 自分たちの地域を自分たちで守り活性化しようという考えが敗れ、よそのお金で地域を振興しようという考えが勝った。(私は部落の現役員から「みんなでこの公民館を建て替えようと努力しているのにあんたは公民館が無くてもいいと思っているのか」と面と向かって言われた。)人殺しに協力しないという考えが敗れ、戦争に協力することでお金をもらおうという考えが勝った。
 それでも、私はこう考えている。
 自分の利害を第一に考えるのはいいことだ。よく考えて、自分の本当の利害を考えて欲しい。時間的に少し広げて、自分の子供や孫のことまで。空間的に広げて日本全体や世界のことまで。実際に利害はつながっているのだから。必ず自分に返ってくるのだから。
 西海町は小さくても「地方自治体」である。ある人が「地方自治法をよく読んでご覧なさい。自治体がこんな事までできるのかってびっくりするから。みんな知らないでできないと思いこんでいるんだよ。」と言っていた。
 住民が行政に参加することで時間的にも空間的にも視野を広げて、地域の本当の利害に気づき実現していくことは可能だと思う。選挙の時だけ「主権者」であるだけでは足りないし、だいいちその一票さえ義理や人情やお金で簡単に売り渡してしまう。とりあえず様々な分野で(最終的にはすべての分野で)住民が行政と対等な立場で参加すること。そういったシステムを一つ一つ作りだしていくこと。小さい自治体ほど、それはやり易いはずだ。
 さて、何から手を付けたらいいのだろう。
 
 何ができるのかわからない、何もできないかもしれない。でも考え続けること、発言し続けることぐらいはできそうだ。「使わないと無くなってしまうもの、それが権利だ」と教わった。横の人と手をつないで一人一人が自分の主人公となり、この地域が「民主主義」と呼ばれる遙かな理想に一歩近づくために、とりあえず何をしたらいいのだろう。

(終わり)