LCACがやってくる
それから事態は信じられないスピードで進んだ。本会議の一時間後には町長は記者会見でLCAC受け入れを発表した。地元五地区で福岡防衛施設局との「協定書」の説明会が開かれた。港内運行速度の制限、夜間運行の禁止、航路の設定など反対派の主張の一部が盛り込まれたが、あとは「配慮する」「協議する」などの抽象的な表現にとどまっていた。私は「説明会」で「協定書は米軍を含む三者で締結すべきである」「協定に違反した場合、基地の使用を禁止する、という条項が必要である」などと要求したが聞き入れられなかった。
一月末には「協定書」が調印されると聞いて私はあわてた。何人かの家を回り、連名で次の申し入れを行った。
申入書
西海町長殿
LCACに関する協定書については各地区、議会全員協議会で「説明」が行われていますが、「細則」を含む最終案の全文については町民に開示もされていませんし、全員協議会、各地区の説明会では多数の反対意見が出されています。
どのような協定を結ぶかは私たち町民の生活にかかわることであり、今後半永久的に「町づくり」に影響を与えます。万一このまま合意形成への努力を放棄し強権的に協定書の締結を行えば議会内及び町民の間に混乱と対立をもたらすことになり、決して許すことはできません。
以上の観点から私たちは町民の立場から下記の事項を申し入れます。
1.LCACに関する協定書の細則を含む最終案全文を町民に開示し、議会の承認、関係地区住民及び漁協の同意を得てから締結して下さい
2000年1月25日
ごくあっさりと無視されて、協定書は翌日締結された。
「議会内及び町民の間」に「混乱と対立」は起きなかった。
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ