LCACがやってくる
議員の半分近くが討論に参加したあと、議長は採決に移ると宣言した。その時、一人の議員が挙手した。
「重要な議題なので無記名投票を提案します。」すぐ別の議員が「私も賛成します。」と発言した。議長は「2名の動議がありましたので議会規則により、採決は無記名投票とします。」と宣言した。
顔から血の気が引いた。後の席から見知らぬ人(たぶん共産党関係者)が「これで請願に賛成しやすくなりますね。」と話しかけてきた。「逆ですよ。町長派の巻き返しです。」私は唸った。
数日前に私は議長と会っている。その時町長派の策動について彼は「寝返りしやすいように無記名投票を提案してくるかもしれませんね。」と私に語った。「その場合は?」「大丈夫、採決方法は議長の裁量ですから。」
話が違うだろう。あのとき議長は勘違いでもしていたのか。まずい。絶対まずい。
やがて投票用紙と投票箱が運び込まれて、議長が議場閉鎖を宣言し、投票が始まった。じりじりするような時間がたち、結果が告げられた。
「請願採択に賛成7票、反対10票、よって請願は不採択となりました。」
私は顔を覆った。テレビカメラがすぐ近くで私を撮していた。
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ