LCACがやってくる
15分前に着くと本会議場は傍聴席の外まですでに人があふれていた。NBCの記者が私のために一番前の席を確保してくれていた。隣は寄船の郷長だった。私はマスコミに改めて「請願書」を配った。初めて会う共同通信社の記者からインタビューを受けた。後を見渡すと、私たちの仲間、町長後援会の幹部、たぶん共産党関係者と思われる人々、そしてマスコミで一杯だ。これではふつうの住民はほとんど入れないだろうな。
定刻に議長が開会を宣言し、特別委員会委員長から請願採択に至った経過が詳しく説明され、討論に移った。この町ではかつて聞いたこともない熱のこもった討論だった。とりわけ渕香代子議員の討論は涙が出るほど素晴らしかった。
それに対して今やはっきりと推進の立場に立った町長派は、日米安保がこの国の発展に重要な役割を担ってきた、という立場だった。中には共産党がこの問題に力を入れてきたことを取り上げ、「町外勢力に惑わされることなく」などという発言もあって私たちを怒らせた。しかしなにより彼らは「基地賛成署名は反対署名を大きく上回る」と一様に主張していた。昨日まで私たちが「反対の要望はいくつも出されているが賛成の要望は一通も提出されていない」と主張してきたのだから、彼らにしてみれば胸のすく思いだったのかもしれない。
作品名:LCACがやってくる 作家名:つだみつぐ