こんな日はキミに愛の詩を
ボクは、ひとりで食事をして、少ない食器の片づけをした。見たいテレビ番組もなかったので、シャワーを浴び、風呂上りに冷えた水を飲んだ。まだ眠たくもなかったが、そのうち眠くなるだろうと、ベッドのある部屋へ行った。
ボクのシングルのベッドには、キミが洗濯してくれたお日さまと柔軟剤の香りのするシーツが 皺がひとつもないほど気持ち良く広げ敷いてあった。
これはボクのだったかなと思うほどふっくらとした枕とふんわり二つ折りに足元に置かれた布団を見て、キミと過ごせない寂しさを感じた。
「ありがとう……おやすみ」
居ないキミに言葉をかけて、シーツに身を横たえた。
ぴーんとシーツは張っているのに 包み込まれるような感覚は不思議だった。
そんなことを考えているうち、いつしかボクは睡魔の魔力に堕ちていったようだ。
そして、朝、目覚めた白いシーツは、ボクの寝姿を残して幾つもの波を作っていた。
今朝は、キミのモーニングコールも 不意打ちのモーニングキスもないままに、仕掛けられた目覚まし時計のベルも鳴らない前に ボクは目覚めた。
窓の外は、暗い。シャァーという車のタイヤと濡れた路面のハーモニーが耳に届いた。
外は、雨。
あんなに 綺麗な夕陽が見えた昨日の空はどうしたんだろう。
一変して 哀しい思いをしたのだろうかと思うほど空は、泣き崩れていた。
キミは、こんな日が、苦手だったね。
この空のように哀しい顔をして、涙なんか溜めていないだろうかとボクは、気に掛かる。
ボクだけの温もりのベッドの中で、キミにメールを送った。
『おはよう 雨降りだね ……』
ボクの拙い文は キミを元気にできるだろうか。
精一杯の言葉を並べてみるけれど 微笑んでくれるだろうか。
ボクの綴る 愛の詩
キミだけのために “ LOVE ”
― 了 ―
作品名:こんな日はキミに愛の詩を 作家名:甜茶