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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 二人にとっての空白の八年間、この時の流れの中で、ルリに一体何があったのだろうか。
 ルリは酸味一杯のフレッシュな青いレモンのようだった。明るい陽の光の下で、溌剌(はつらつ)とした女子学生だった。そんなルリが今、堰(せき)を切ったかのように、狂った愛を求めてくる。

「誰かに見られているかも知れないよ」
 霧沢はルリの激しさに躊躇(ちゅうちょ)しながら、少しの理性を見せた。
「アクちゃん、もう構わないの、八年待ったのだから、だから、ここで……、して」
 もうルリが止まらない。そしてルリは、ただただ中天に上がった青白くてまん丸の月を睨み付けている。
 霧沢はそんなルリの背後から、硬くなった自分のものを押し入れた。ルリの奥深い肉の熱が充分熱く伝わってくる。
 ルリが窓ガラスに手を付いて、身体をよじり出した。そしてもう切なく嗚咽する。霧沢は八年の空白を埋めるかのように、さらに強く、そして深く、奥へと押し入れていった、

「ああ、あの月に、アクちゃんと一緒に……」
 ルリはそう言いながら、イッタ。
 しかし霧沢とっては、これだけでは八年の歳月は取り戻せない。もっとルリに、今できる限りの女の幸せをと思い、辛うじて踏み止まった。
 霧沢はそのままの姿態で、ルリの絶頂がおさまるまでしばらく待ってやる。そしてルリの手をゆっくりと窓ガラスから外す。
 するとそこには、紅葉のようなルリの手形がガラス面に浮き出していた。

「ルリ、見てごらん、ルリの手の跡が残ってるよ。……、消しておこうか?」
 霧沢は訊いた。
「ううん、いいのよ。……、そのまま残しておいて」
 ルリは淡泊に返した。しかし、それはまるで愛の痕跡(こんせき)を残しておきたいという、ルリの意思の表れなのだろうか。

 確かにそうなのかも知れない。この八年間に、二人で残した痕跡は何もない。あったのは想い出だけを思い出す、そんなやり切れない日々だけだった。
 だからルリは、そんな八年の空白を取り戻すために、多分その愛欲を炸裂させてしまったのだろう。霧沢はそんなルリの貪欲さに反発ができない。

「ベットに行こうか?」
 霧沢はカーテンを引きながら訊いた。
「連れてって」
 ルリは小さく首を縦に振った。霧沢はそんなルリを抱えてベッドへと入る。そしてルリは霧沢に抱かれたままで、柔らかな表情で眠る。