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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 霧沢はベッドの上でごろんと寝っ転がっている。テレビからは軽い音楽が流れてる。
 しかし、特に興味があるというものではない。ただ漠然と天井を眺めてる。
 遠くの方から聞こえてきていたシャワーの音、それは止まったようだ。しばらくして、真っ白なバスローブを羽織って、ルリが現れ出てきた。
 そしてルリは窓際に行き、少しカーテンを開けた。秋の夜の眺望が薄暗い部屋に躙(にじ)り入る。

 鴨川から二人で眺めた月は淡黄色だった。だがそれは、今はもっと淡くなってしまったのか、中天に青白くぽかりと浮かんでいる。ルリは濡れた黒髪を拭きながら、そんな月に見入っている。
「アクちゃん、お月さんがまん丸で、綺麗だわよ」
「そうなの?」
 霧沢はベットからすり下りて、窓から夜の風景に溶け込むルリに近付いて行った。そして背後からルリをそっと抱きしめた。
「そうだね、ルリと同じくらいに、きれいだね」
 霧沢はルリの耳元でそう囁いた。

「アクちゃん、私、今幸せを感じるのよ」
 ルリが切な過ぎる声で囁き返してきた。そんな二人は一つのシルエットとなり、夜空の月光の彼方へと吸い込まれて行きそうだ。
「あのお月さんまで、二人で飛んで行けたら……、いいわね」
 ルリがそんなことを小声で呟いた。
「ああ、ルリと飛んで行きたいよ」
 霧沢はルリの言葉に特に合わせたわけではない。確かにそう思ったのだ。

「ほんと?」
 ルリがそう確かめてくる。「うん」と、霧沢は小さく頷いた。
 するとルリは、いきなりバスローブをさらさらと脱ぎ捨てた。そして、その温もりが残る両手を窓ガラスにぺたっと貼り付けたのだ。
「ねえ、だったら、アクちゃん、ここでお月さんを見ながら……、して」
 ルリがせがむ。