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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 ルリは少し驚いた様子だったが、別段恥ずかしがっている風でもない。多分自分の肉体に自信があるのだろう。

 黒髪が湯の熱で柔らかく絡み合い、淡いピンク色に色付いた襟足を包んでいる。そして、うなじから曲線が滑らかに前方に伸び、ふるいつきたくなるような乳房の膨らみを艶めかしく輪郭付ける。
 さらにそこから色気な曲線は緩やかに下っていき、くっと括(くび)れたウエストを造形化させ、裸体全体を引き締まらせている。
 今にもしなやかにしなりそう。そんなウエストを、ツンと張りのあるヒップが均整良く支えている。そして、その結果として、艶(つや)やかな上半身全体がより上へと持ち上げられている。

 さらにその女体曲線は、その清艶なるヒップから、白く透き通った太股をなぞり下っていく。そして形の良い長い足を形成させ、つま先に塗られた赤いペディキュアで、その妖美な曲線を終わらせているのだ。
 こんな美形なルリの裸体。今、それ全体がほんのりと薄桃色に色付いている。

「アクちゃん、こっちへ来て」
 ルリは霧沢の身体一杯にボディーシャンプーを塗りつけ、泡立てさせ始めた。シャワーで飛び散る飛沫に目を細めながら、楽しそうに霧沢の胸板を洗い出す。
 ルリの乳房がぷるるんと揺れる。霧沢は思わず撫でてみた。そのツルンとした感触が気持ち良い。
 ルリは「ううん」と短く呻き、少し身体を捩(よじ)りながら、その手を霧沢の下腹部へと移動させていく。そしてぎこちない手付きで、今度は霧沢の一物(いちもつ)を洗い出す。
 しかし、それは何か自分の一番大事な宝物を手にしたように、ルリは丁寧に扱う。幼い女の子が大好きなキューピー人形を与えられたかのように、ルリはそれを撫でるようにしてしばらく遊んでいる。

 八年のこの長い時の流れ、それがやっと終わり、二人切りに今なれた。しかもこんな秘密の場所で。もう互いの大人の欲情が剥(む)き出しになっても、なんの不思議でもない。
 霧沢はルリを見てみた。「はあはあ」と身悶(みもだ)えし始めてる。霧沢はそんな乱れたルリがもう堪(たま)らない。そんな一瞬に、ルリは消え入るような声で囁くのだ。
「後にして」

 霧沢にとってそんな残酷な言葉はシャワーの音で掻き消されてしまえば良いと思った。
 しかし、霧沢はしっかりとそれを聞いてしまった。その上に、ルリは喘ぎながらももう一言を付け加えてきた。
「すぐに行くから」

 霧沢はここに至ってしまった以上、今夜はルリの好きなようにさせてやりたいと思った。そして、中途半端ながらもシャワー室から何事もなかったように出て行くのだった。