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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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「なんで、そんなことに……、なってしまっていたんだよ」
 今にもそう叫び出しそうになる霧沢に、真由美は「ちょっと落ち着いて、説明するから」と宥めてくる。

「霧沢さんが宙蔵さんのマンションに訪ねはったんは、紫陽花が一杯咲いていた頃のことだったでしょ。その一ヶ月ほど前のことだったわ、みんな集まってね、宙蔵さんのマンションでパーティがあったんよ。その頃私まだ若くってね、そこで酔い潰れてしまって、早めにアパートに帰って……、前後不覚のまま、洋子さんのベッドで寝てしまったんよ」
 霧沢はここまで聞いて、およそ何が起こったのかすぐに推測できた。

「真由美さん、その話しはもうそこまででいいよ。後から訪ねてきた宙蔵が間違ったんだろ。……、洋子と真由美さんを」
「そうなの、私、訳もわからずにね、抱かれてしもうたわ。だけど、洋子さんに悪いことをしてしまったし、罪を犯してしまったのよ。それからすぐに宙蔵さんは、罰が当たったかのように殺されてしまわはったし、洋子さんは、私のややの父が宙蔵さんだと薄々感じながら、首絞められて亡くなってしもうたんやから……、洋子さんにはホント申し訳なくって」
 真由美はここまでの過去を打ち明け、またエンエンと泣き出した。霧沢は知らなかったが、そういうことが起こっていたのかと思い、そして思い出すのだった。

 三室戸寺で宙蔵にばったり出会った時、宙蔵が「ちょっと目出度いことがあってね。記念に紫陽花の絵を描いてやろうかと、その題材探しだよ」と言っていた。
 あの目出度いこととは、愛莉の誕生のことかと思っていたが、それは真由美の懐妊のことだったのだと。そして霧沢は想像を巡らす。
「となると、宙蔵が桜子に殺されたのは、愛莉の認知問題以外に、この間違いでの真由美の妊娠、これももう一つの動機になっていたのかも知れないなあ。しかし、真由美は龍二と結婚させられ、優菜を人質に取られて、とにかく生かされてきた。……、それにしても、なぜ真由美は、洋子のように殺されなかったのだろうか?」

 霧沢はそんなことをつらつらと考えてはみたが、その答が見付からない。だがここはまず真由美を気遣い、「真由美さん、間違いだったんだろ、もう良いんじゃないか、要は、優菜さんは愛莉の妹なんだろ。……、愛莉もこれを知ったら、きっと喜ぶから」と告げた。

 これを聞いた真由美、もう涙が止まるどころではない。さらに泣きながら、「霧沢さん、おおきに。私、優菜を産もうか、どうしようかと迷っていた時にね、ルリ姉さんも、愛莉ちゃんの妹なんだから、その命を授かってと、背中を押してくれはったんよ」と言い、霧沢の手をぎゅっと握り締めてくる。
 そんな真由美の手を、霧沢は自分の手でそっと包み込んでやる。