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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 だが霧沢にはもう一つ不確かで、確認しておきたいことがある。
「ちょっと話し難いのだけど、その頃、すでに龍二さんと女将の桜子さんとの男女関係はあったんだろ?」
 霧沢は思い切ってその道ならぬ恋について訊いてみた。

「その通りよ。桜子さんは一旦は宙蔵さんと一緒にならはったんやけど、結局は龍二と一緒に京藍をやっていきたかったんやろね」
 真由美があっさりとそう返してきた。
 さらに、「だけど宙蔵さんには愛莉ちゃんができてしもうたから、それで余計に宙蔵さんが邪魔になってしもうたんやわ、それで殺してしもうて。それからほぼ一年後に洋子さんまでも殺めてしまったんやから……、ホンマ、鬼ばばだわ」と熾烈な言葉で語る。そこには今までの苦しい思いが込められている。

「やっぱりそうだったのか」と霧沢は一人頷くしかない。そしてその横で、真由美はいかにも口惜しそうな面差しをしてじっと座っている。
「だけど私も馬鹿やったわ、ルリ姉さんの言う通りやったんよ。桜子は私が娘を育てるのをそれなりにサポートしてくれたんだけど、それは見掛けだけだったわ。結局娘を人質に取られてしもうたようなもので……、はっきりとは言わはらなかったけど、それらの悪事の口止めを、私にしてきてはったということなんやろね」

 霧沢は「ふうん、そういうことなのか」と合点がいった。真由美は手にしたグラスのビールを一口ゴクリと飲み、今度は特に感情を表に出す風でもなく告白を続ける。
「もっと不幸なことにね、龍二の方なんやけど、桜子とは真っ向から目的がぶつかり合ってたんよね。龍二の人生全部がね、京藍を全部自分のものにするためのものだったんよ。……、その野心を果たすために、光樹さんも私も、それに桜子までもが、結局はみんな龍二の道具として使われただけだったんよ。ホンマ、えげつない男だったわ」

 真由美の語り口調は一応淡々とはしていたが、内容は辛辣なものだった。
 しかし霧沢はそういうことも覚悟をして、この小料理店・鴨川青龍へ真実を教えてもらいにきた。したがって、もう心の動揺はない。そこで霧沢はもう一つ訊いてみる。
「それで、今、龍二さんはどこにいるの?」

 真由美はこの質問を受けて、しばらく沈黙する。しかし余程忌み嫌っているのか、唇をぐっと噛みしめ、憎悪に満ちた目に涙を滲ませながら重く話す。
「京藍よ。だって女将はもうこの世にはいてはらへんさかい。純一郎さんを柱において、自分の好きなようにやってるんでしょ」
「へえ、純一郎君をね……」と霧沢が訝っていると、真由美は吐き捨てるように、「だって自分の息子なんえ。これで龍二は、光樹さんや私を利用するだけ利用して、自分の野望を果たしたことになったんよ」と言い切った。